週刊エコノミスト Online書評

若者たちのACG消費とは? 昨今の中国大学生事情 菱田雅晴

 2022年12月7日にようやく行われた中国の「ゼロコロナ」政策の緩和という転換姿勢を事前に示唆していたのが、習近平国家主席の欧州連合(EU)ミシェル理事会議長との会談(12月1日)時の発言だった。習主席は中国全土に広がった新型コロナウイルス規制に対する抗議活動を「主に学生や10代の若者によるもの」と説明していた。若者の不満表明が政権の看板政策の転換をもたらしたといえる。今や若者の存在は中国政治を左右する要因となっている。

 では、その中国の若者は今なにを思い、どのように暮らしているのか。その一端を林峰著『当代大学生大衆文化消費行為研究』(中国社会科学出版社、2022年)で垣間見ることができる。本書は、林峰・西南政法大学副教授が南開大学に提出した博士論文に基づくものだが、ここでは、月間消費支出額が1000~3000元という大学生が56.7%と過半を占め、3000~5000元/月という大学生も28.2%いる(清華大学等調査、2016年)と紹介されている。同年の都市住民1人当たりの平均年間消費額が2万1382元、つまり月間消費1800元にもほぼ符合する。その大学生の日常消費支出の内訳をみると、飲食が54.1%と最大項目で、これに服飾、日用品が続き、第4位が社交娯楽項目という(上海交通大学等調査)。こうした状況から、林峰が着目するのがこの社交娯楽支出で、南開大学、華中師範大学等20校の大学生2000人を対象に、大衆文化の消費の選好、方式、目的につきアンケート調査を実施した。

 その結果、本書が大学生の大衆文化の消費方式として指摘しているのが粉丝文化、ACG文化、弾幕文化の3タイプである。粉丝とは明星(=スター)などに憧れるファンの意で、チケット購入等の追星(=追っかけ)族の消費である。ACGは、アニメ、漫画、ゲーム(およびグッズ)の頭文字、その購入対象が日本のACGという点は大いに注目される。一方、弾幕とは、視聴者が書き込んだコメントや「打賞=投げ銭」が動画サービス画面を覆い尽くす状態を指すネット用語だが、これら3タイプいずれもSNS関連の消費である。ネット社会の主役としての中国の若者像がここにも示されている。

(菱田雅晴・法政大学名誉教授)


 この欄は「永江朗の出版業界事情」と隔週で掲載します。


週刊エコノミスト2023年1月31日号掲載

海外出版事情 中国 ACG消費とは? 中国の大学生事情=菱田雅晴

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