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週刊エコノミスト Online ロングインタビュー情熱人

初の元Jリーガーチェアマン――野々村芳和さん

「僕にとっての一番のスターはラモス瑠偉さんでしたね」 撮影=武市公孝
「僕にとっての一番のスターはラモス瑠偉さんでしたね」 撮影=武市公孝

Jリーグチェアマン 野々村芳和/66

 元Jリーガーとして初のJリーグチェアマンとなった野々村芳和さん。地域の人々を幸せにし、経済的な効果ももたらすサッカーの可能性を信じ続けてきた。そして、Jリーグは今年、発足30周年の節目を迎える──。(聞き手=元川悦子・ライター)

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── 2月17日の横浜F・マリノス対川崎フロンターレ戦から、発足30周年となる2023年シーズンのJリーグが開幕します。

野々村 今年はJ1~J3まで60クラブでスタートします。Jリーグが始まった1993年当時は10クラブで、エンターテインメントとしては華やかに見えたかもしれないけれど、今は60クラブになり、本当の意味のサポーターは圧倒的に増えたと思うんです。「おらが町のチームを絶対に勝たせたい」という熱量は数十倍高いと感じます。地域によってはクラブ規模が小さかったり、成績のアップダウンがあったりしますが、クラブの存在は人々を幸せにしていますよね。

── 確かに、昨年11~12月のワールドカップ(W杯)カタール大会で活躍した選手は、みなJリーグ出身ですね。それぞれの選手を応援した地域の人々は喜んだはずです。

野々村 一例を挙げると、クロアチア戦で先制点を挙げた前田大然選手は松本山雅(現J3)、横浜FMを経由して、スコットランドの強豪セルティックに行ったプレーヤー。5年前は当時J2だった松本山雅にいたわけです。彼を育てたのはまぎれもなく地域の人たち。W杯で感動を味わった人も多かったと思うし、それもJリーグの楽しみの一つなんです。世界中で愛されるサッカーはもともと魅力的だし、そこに疑いの余地はありませんが、Jリーグを通じて全国各地に根付いた。W杯での選手の活躍や日本の盛り上がりは、その証しでもあるのかなと思いますね。

── ちなみに、野々村さんはJリーグ開幕初戦となった93年5月15日のヴェルディ川崎(現東京V)対横浜マリノス(現横浜FM)戦当日は何をしていましたか?

野々村 正直、記憶が定かじゃないんですよ(苦笑)。(試合会場の)国立競技場のゴール裏で見ていた記憶はありますけれど……。ただ、サッカーどころの静岡県清水市(現静岡市)で子どものころからサッカーをやってきた僕自身にとって、歴史的出来事だったのは間違いない。カズ(三浦知良)さんのインパクトは大きかったですが、僕にとっての一番のスターはラモス瑠偉さんでしたね。

元Jリーガーでは初

── その2年後の95年、慶応義塾大学を卒業してジェフユナイテッド市原(現千葉)入りし、Jリーガーとして活躍しました。

野々村 経営的にもいい時代で、僕ら選手は待遇面でも恩恵を受けました。ジェフ時代で一番記憶に残っているのは、10カ月試合に出られなかった98~99年です。今でいうグロインペイン(そけい部痛)だったんでしょうが、当時は原因も分からず、治療法も確立されていませんでした。しかし、99年のジェフはJ2降格の危機に瀕(ひん)していたので、僕は両アキレスけんに注射を打って最終節・ガンバ大阪戦に出場。決勝点をアシストし、何とか残留を勝ち取ったことをよく覚えています。

── 2000年にはコンサドーレ札幌(現北海道コンサドーレ札幌)に移籍しました。

野々村 当時札幌監督の岡田武史さん(現日本サッカー協会副会長)から直々にオファーを受けて行きました。「自分のプレーがこんなに周りに喜んでもらえるのか」と初めて感じたのが札幌です。東芝が母体のクラブが96年に札幌に移転し、Jリーグ入りを果たした後でもあったので、地元財界やサポーターの熱気はすごかった。後に僕に「(札幌の)社長をやれ」と言ってくれた石屋製菓(札幌市)の石水勲名誉会長(故人)のような経営者に出会えましたし、00年にJ2優勝にも貢献できた。本当に幸運でした。

 初代チェアマン…

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