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経済・企業 ロングインタビュー情熱人

自転車ロードレースに取り組む――栗村修さん

「呼ばれてもいないのに、チームに押しかけて選手になりました。それが原点ですかね(笑)」 撮影=武市公孝
「呼ばれてもいないのに、チームに押しかけて選手になりました。それが原点ですかね(笑)」 撮影=武市公孝

日本自転車普及協会理事、自転車競技解説者 栗村修/67

 フランスでは国の一大スポーツでもある自転車ロードレース。日本ではまだマイナーな存在だ。この壁を打ち破ろうと奮闘している。(聞き手=和田肇・編集部)

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── 自転車に興味を持ったのは、いつからですか。

栗村 小学生の頃からです。自転車で公園の崖を下ったりとか、いま思えば、かなり危ない乗り方もしていました。転機になったのが、中学2年生の時に、NHKの「ツール・ド・フランス総集編」(編注①)を見たことです。

── どこに引かれたのですか。

栗村 その時はフランスのベルナール・イノー選手(編注②)が総合優勝しました。ヨーロッパの青い空、山脈の自然、レンガ造りの街並み、レース最終日に走るパリ・シャンゼリゼ通り、自転車選手たちのカラフルなチームウエア。そうした光景に衝撃を受けて、「自転車ロードレースの選手になって、ツール・ド・フランスに出たい」と思いました。自分の進路は自転車選手だと決めていたので、高校は自転車競技部がある地元の公立高校に入りました。

 編注①=自転車ロードレースの世界最高峰の大会。毎年7月にフランスで行われ、23日間で三千数百キロメートルを走破する。編注②=1954年生まれ。フランスの自転車ロードレース選手。ツール・ド・フランス5回優勝、世界選手権優勝、その他多くの大会で優勝した往年の名選手。

高校2年で中退し、渡仏

── 高校時代はどうでしたか。

栗村 高校に入ってから知ったのですが、自転車競技部は前年に廃部になっていたんです。「えーっ」という感じです。「だって学校案内のパンフレットに書いてあったじゃん」(笑)。でも仕方がない。それで高校に通う熱意をなくしてしまいました。

 自転車部がないので、地域の自転車クラブチームに入って練習していたのですが、そのチームの当時20歳過ぎの先輩に、「おい栗村、一緒にフランスに行くぞ」と誘われました。それで自分もフランスに行くと決めてしまいました。あとから知ったのですが、フランスのチームから誘いがあったわけではなく、その先輩が「私は日本人です。自転車ロードレース選手になりたいです」と、そんな程度の手紙を書いて、フランスの自転車競技団体に出したら、手紙で返事が来て、ナント市(フランス西部)にある自転車チームの住所が書いてあった。そのチームに行けとか、そのチームから来いとかは何も書いていない(笑)。当時はインターネットなどない時代でしたから。

── どうしたんですか。

栗村 その頃は「ヨーロッパに行ってプロになる」ことだけしか考えていなかったので、もう行く気満々です。フランス語など全く話せないし、現地の知識も全くない。でも僕は高校2年の途中で中退して、その先輩とナントに行きました。ナントのチームはびっくりしていましたよ(笑)。当然ですよね。ある日突然、2人の日本人が自転車を担いで現れて、「チームに入れてくれ」と言っている(笑)。でも、そのチームのジャック・ミショーさんというオーナーが、大変いい人で、僕らをチームに入れてくれたんですね。住む場所は大学の寮。大学に話をつけてくれて。

── 高校を中退した時は、どんな気持ちでしたか。

栗村 当時は、高校中退なんてしたら大変な時代。母親は泣いていました。渡航費を稼ぐために、高校を中退してから半年ぐらいアルバイトをしました。その頃が一番つらかった。「高校中退」のレッテルは厳しく、アルバイト採用の面接もたくさん落ちました。寝ていても中退せずに高校に通っている夢を見る。夢の中では中退せずにほっとしているんです。しかし、目が覚めると「本当に高校を中退したんだ」と現実に戻る。

── ナントのチームに入ってからはどうでしたか。

栗村 チームに入って約2週間後には、レースに出場していました。まだ17歳だったので…

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週刊エコノミスト

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