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週刊エコノミスト Online 挑戦者2023

こどもの笑顔と成長を写真に――前田孝司さん

まえだ・こうじ 1977年福岡県生まれ 麻生外語観光カレッジ在学中に国内外の風景写真を始める。96年、写真屋でアルバイトを始め、2018年個人事業として独立し幼稚園・保育園の撮影事業を開始。20年スリースマイルラボ設立。「子どもの笑顔は無条件で見る者を幸せする」という理念で撮影事業を続けている。45歳。(撮影 武市公孝)撮影協力:あい保育園下井草(東京都杉並区)
まえだ・こうじ 1977年福岡県生まれ 麻生外語観光カレッジ在学中に国内外の風景写真を始める。96年、写真屋でアルバイトを始め、2018年個人事業として独立し幼稚園・保育園の撮影事業を開始。20年スリースマイルラボ設立。「子どもの笑顔は無条件で見る者を幸せする」という理念で撮影事業を続けている。45歳。(撮影 武市公孝)撮影協力:あい保育園下井草(東京都杉並区)

スリースマイルラボ代表取締役 前田孝司

 子どもたちの笑顔は親御さんだけにとどまらず街全体を元気にします。デジタル時代だからこそ紙焼きの写真を広げていきます。(聞き手=金山隆一・編集部)

>>連載「挑戦者2023」はこちら

 社名のスリースマイルラボには、園児と保護者、保育士の先生、3者の笑顔という意味が込められています。笑顔にはそれが他人のお子さんでも、見る者を幸せな気持ちにさせ、その街や地域を元気にする力がある。

 私は社会人になって以来、紙焼き写真の現像や写真館の営業など、27年にわたって写真関連の仕事に携わってきました。しかしデジタルカメラやスマホの普及とともに写真現像の枚数が減少していきました。子どもの写真はすべてスマホの中のデジタルデータという人が増えてきた。でもデジタルのデータだけでは消えることもある。

 学校で「子どもの頃の写真を持ってきてください」といわれてもデジタルデータしかないという人もいます。そこで保育園に出向いて、子どもたちの成長と笑顔を撮る写真撮影事業を開始し、18年に独立し、20年7月にスリースマイルラボを立ち上げました。

 私たちはまず保育園に赴いて園児たちと一緒に遊び、仲良くなってから、その笑顔を撮影します。例えばお箸を持てなかった子が使えるようになるまでの成長ぶり、水面に顔をつけるのさえ怖がった子がプールで潜れるようになった瞬間、その成長の過程と笑顔の瞬間を撮影します。これをインターネットで親御さんや園の先生が自由に選んで購入します。なかには数十万円も購入した人もいました。

 本社は川崎で、横浜市、前橋市、水戸市、故郷の福岡市の5拠点で事業を行っています。営業マンはいません。園の先生や写真を購入した親御さんが口コミで友人などに広げてくれるからです。営業活動ができない公立の保育園からも撮影依頼が来ています。

 売り上げは前年の2.5倍に成長しています。カメラマンは現在27人ですが、足りないので私自身も保育園に行って撮影しています。

 カメラマンは常時募集しているのですが、なかなか採用が決まらない。撮影技術ではなく園児や保育士さんとのコミュニケーション能力が大事だからです。撮影技術は学ぶことも教えることもできますが、人間力は簡単に身につくものではない。だから経験あるプロのカメラマンではなく、子育ての経験があるお母さんを採用することもあります。撮影時間は9時から12時ですから、子育てしながらでも働けます。

「ほめ写真」が人を強くする

水戸市で今年2月に開いた写真展では、親子3代の子供時代の笑顔写真を展示し、3日間で950人が来場した
水戸市で今年2月に開いた写真展では、親子3代の子供時代の笑顔写真を展示し、3日間で950人が来場した

 私は子どもの笑顔こそが人や地域を幸せにする、という考えに共感してくれる仲間を探しています。最終的には、「えがおの街」と呼ばれるような私たちが撮影する保育園や幼稚園のある自治体を元気にすること。そして自分が成長した瞬間の笑顔の「ほめ写真」であふれる保育園の経営に乗り出したいと考えています。

 米国などの家庭に行くと、家族の写真であふれている。この自己肯定感を育む「ほめ写真」こそが、自己主張をしっかりできる人間を育てる。笑顔の写真は人を強くする力があると信じています。


企業概要

事業内容:幼稚園・保育園の撮影事業

本社所在地:川崎市

設立:2020年7月

資本金:100万円

従業員数:11人


週刊エコノミスト2023年3月21日号掲載

挑戦者2023 スリースマイルラボ代表取締役 前田孝司 こどもの笑顔と成長を写真に

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