人口爆発と少子化への対処は歴史から学べ 本村凌二
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終戦後の第1次ベビーブームのころ、1年間に270万人も生まれていたのに、昨年はとうとう80万人にすら達しなかった。3分の1以下になったのだから、深刻さは凄(すさ)まじい。日本最大の問題は「少子化」であり、やっと政府も重い腰を上げる気になったらしい。
野原慎司『人口の経済学 平等の構想と統治をめぐる思想史』(講談社、2310円)は、社会思想史の底流を成してきた人口をめぐる経済学の思考に焦点をあてて浮き彫りにする。発展途上国の人口爆発と先進国における少子化が同時に起こっており、それは地球規模での危機となっている。その問題を解きほぐすためには、人口が制度や統治からいかなる影響を受けてきたかについて、時代変化のなかで理解すべきである。
16世紀以降の近代社会において、人口は一国の富を示す指標として重要であった。そのために、過去の経済学者の人口論を振り返ってみなければならない。それまでの時代と異なり、17世紀は「重商主義」の時代であった。翌18世紀の1776年に出版された『国富論』の著者アダム・スミスが経済学の創始者であるとすれば、それは「法と統治の一般的諸原理」の一部であった。スミスは自由と…
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週刊エコノミスト
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