映画　幻滅

　原作は文豪バルザックの小説。最近ではこのような古典小説が映画化されるのは珍しい。19世紀前半の話なので、時代劇のように製作費がかさみ、製作が難しくなっているのだ。それでも果敢に作られた本作は、フランスの映画賞セザール賞7部門受賞を達成した。

　イケメン俳優のバンジャマン・ヴォワザンを主人公のリュシアンに抜てき、徹底的に彼の行動を追いながら物語を進めていく。こういうスタイルの映画も今では珍しくなっている。

　1800年代のフランス。牧歌的な田園都市アングレームの印刷所で働くリュシアンは詩人を夢見る青年。貴族の夫人ルイーズと密会を重ねている。ルイーズの夫の逆鱗(げきりん)に触れたリュシアンは、ルイーズと共にパリに駆け落ち同様に出奔する。リュシアンは、母方の貴族の名を名乗ってパリの社交界に進出しようとするのだが、素性を見抜かれて冷笑を浴びる。金もなくなったリュシアンは、新聞記者の友人を作り、記者の道に進む。やがて記者として成功したリュシアンは、大衆演劇の女優コラリーと愛し合うようになる。

　重厚で華やかな映像にクラシックの名曲をからめる古典文学の世界。美男美女が行き交うゴージャスなパリ社交界。いかにもバルザックの名作という貫禄に満ちた作品だが、古さを感じさせない作りになっている。テンポを緩めずに歯切れよくストーリーを展開させているからだ。さらに当時のジャーナリズムがいかに腐敗堕落していたか、という点を突いた。あることもないことも都合よく取り混ぜて報道し、汚い金を集めながら当時の新…