韓国の“自己責任”社会を反映 子供を含むホームレス描く 寺脇研
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映画 高速道路家族
3月16、17日の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領訪日をきっかけに、日韓関係改善の方向が見えてきたのは喜ばしい限りである。両国の社会は同じ深刻な問題を抱えているのだから、ともに考えることができるといい。
少子高齢化、地方の衰退、そして何より経済格差が増大する一方で、国民間の分断にまで至りかねない危機を迎えている。若者が「闇バイト」へ走ってしまうような状況をなんとかするのは、韓国でも日本でも焦眉(しょうび)の急だろう。
この映画は、切迫した事態を鮮烈に印象づけてくれる。主人公一家はホームレス。夫婦と、数え年で9歳の娘、5歳の息子の4人で放浪している。いや、母親のお腹には産まれてくる赤ん坊もいて、2022年の合計特殊出生率0.78(韓国統計庁)のこの国では喜ばしい家族なのだが、いかんせん金がない。
高速道路のサービスエリア内にテントを張ってトイレや水道を利用して暮らし、追い出されると次のエリアへ移動していく。収入源は寸借詐欺だ。駐車場の利用客に、財布を落としてしまって……と持ちかけ、子どもへの同情もひいて2万ウォン(約2000円)を借りる。一応連絡先をもらうものの、もちろん返す気はない。この程度の額なら、警察へも訴えられないとの計算だ。このたくましさが序盤の見ものとなっている。
そんなコメディー調が一変するのは、以前にだました女性と遭遇したため通報され、父親が警察に捕まるあたりからだ。いや、そもそも、いたいけな子どもたちにとってはホームレス生活自体が過酷なものだった…
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週刊エコノミスト
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