芸術ばかりか対話も真摯に展開 フランスの至宝の来日実現 梅津時比古
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クラシック ジャン=クロード・ペヌティエ 80歳アニヴァーサリーリサイタル
ピアニストのジャン=クロード・ペヌティエが、フランスで至宝として遇されているのを見ると、フランスの文化の高さを実感する。
ペヌティエは超絶的なテクニックを誇示するわけでもなく(実際のテクニックは極めて高度だが)、コンクールの成果を誇るわけでもない(フォーレ国際コンクール優勝、ロン=ティボー国際コンクール2位など、材料はいくらでもある)。時流に乗らず、SNSを使って自己宣伝することなど考えもつかないだろう(ペヌティエはコンサートでも小さな会場を望む)。
実は、ペヌティエは時代に背を向けるどころか、大いに発言している。ギリシャ正教の司祭でもあるペヌティエは、10年以上前から各宗教の人、さまざまな政治的立場の人に呼び掛けて討論を交わす真摯(しんし)な試みを続けてきた。テーマは宗教、思想における寛容性。フランス軍が西アフリカ・マリに軍事介入した頃からだから、フランス政府など体制側には快くなかったはずである。ペヌティエにとって、芸術、宗教、政治は一体となっている。芸術とイスラム、ウクライナの戦争が関わりないなどとは決して考えない。
パリ・シャンゼリゼ劇場などフランスで行われたぺヌティエ80歳記念リサイタルが、5月2日、トッパンホールに場所を移し開催される。2回の休憩をはさむ長いプログラムについてぺヌティエは「愛奏してきた曲を並べた」と言う。聴き手もまた自分で自分を問うことになりそうな曲目である。
冒頭第1曲はショパ…
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週刊エコノミスト
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