紛争地の支援に力を注ぐ――前川佑子さん
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国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS)駐日事務所代表 前川佑子/80
東京・渋谷の国連大学本部ビルの中にあるUNOPS(ユノップス)駐日事務所。代表を務めるのは南スーダンやイラクの復興支援に携わってきた前川佑子さんだ。仕事に懸ける思いなどを聞いた。(聞き手=井上志津・ライター)
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── 前川さんは2021年4月からUNOPS駐日事務所の代表を務めています。UNOPSとはどんな機関ですか。
前川 紛争地や危険地域を中心にインフラの建設や医薬品、医療機器、車両などの調達を行う国連機関です。各国政府や国際機関から拠出を受け、80カ国以上で年間約1000件のプロジェクトを実施しています。日本政府は21年だと8600万ドル、為替レートで変わりますが約90億円を拠出しています。日本関連のプロジェクトは現在約30件あり、それらのサポートのほか、外務省やJICA(国際協力機構)、民間企業とやりとりしたり、SNS(交流サイト)などで広報したりするのが駐日事務所の仕事です。
── UNOPSの活動はあまり知られていませんね。
前川 そうなんです。昨年のウクライナ危機の際は日本政府の委託を受け、約115トン分の消防・救助関連資材と医薬品・医療機器などの支援物資をウクライナに輸送しました。それらには英語で「From the People of Japan(日本の人々から)」というメッセージと日の丸をシールにして貼ってありますが、日本の税金がUNOPSを通じてどのように使われ、役立っているかを、事務所代表としてもっと周知しなければと思っています。
前川さんはUNOPS駐日事務所代表に就任する前は、国連開発計画(UNDP)危機予防・復興支援局(当時)ジュネーブ本部、UNDP南スーダン事務所、国連人間居住計画(UN-Habitat)イラク事務所などで働いてきた。紛争地域の復興支援や平和構築に携わりたいと考えるようになったのは、損保会社に勤める父親の赴任に伴って暮らしていたオーストラリア・シドニーの高校で歴史の授業を受けた時からという。
── シドニーでの歴史の授業でどんなことを聞いたのですか。
前川 太平洋戦争中に日本がオーストラリア本土を攻撃していたことです。オーストラリアの歴史の中で、本土を攻撃したのは日本だけなんですね。私は日米が戦ったことは知っていましたが、日本人なのにオーストラリアへの攻撃を知らなかったことがショックでした。当時は1990年代後半でしたが、戦後50年が過ぎても人々の記憶は鮮明で、傷がとても深いことが分かりました。それで子どもながらに戦争をなくしたいと考えたのです。
「『真実は現場にある』が私の行動の基礎」
── 大学卒業後は国際協力銀行(JBIC)に就職しました。
前川 日本の政府開発援助(ODA)を通じて国際協力に貢献することは、平和構築につながると思いました。採用面接の時、インド駐在経験のある面接官の話が入行の決め手になりました。ODAに関しては「国内で苦しんでいる人がいるのに、なぜ海外でお金を使うのか」という批判がありますが、「インドで圧倒的な貧困を目の当たりにすると、日本のODAには意味があると思うし、真実は現場にある」とおっしゃったのです。その言葉は今も私の行動の基礎になっています。
── そのJBICを3年半で退職します。
前川 ベトナム向けの円借款の案件に携わるなどして、やりがいがありましたが、平和構築の専門性を身に付けたいと思い、アメリカの大学院で学ぶことにしました。でも、自分がしたいのは研究ではなく、現場で働くことだと気付き、UNDPに入りました。ちょうど30歳の時です。
念願かない南スーダンへ
── UNDPでは危機予防・復興支援局(当時)ジュネーブ本部に配属されました。
前川 元兵士の武装解除や動員解除、社会復帰に関する政策立案が主な仕事でした。ただ、私としてはやっぱり現場に住んで携わりたかったので、11年5月に南スーダンに移りました。念願がかなってうれしかったですね。
── 希望すれば移れるのですか。
前川 国連はポストに空きができるとインターネットで公募するので、それを自分で探して応募するんです。基本的に国連は契約制で、ポストごとに募集します。1年単位で契約更新し、2、3年で終了という形が多いです。
── 初めて南スーダンという現場に行ってどうでしたか。
前川 南スーダンは11年7月にスーダンから独立するまで、50年間紛争が続いていました。生活環境は厳しく、私もマラリアに2回かかり、食中毒にもなりました。ひったくりにも遭いました。仕事は、復興支援を進めるにあたってコミュニティーの人々から要望を聞き、現地政府とすり合わせた上で国連として要望をかなえるというものです。
しかし、平和な暮らしを経験し…
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週刊エコノミスト
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