低所得層向け集合住宅の不足が大統領選の争点に 所得格差に人種問題も絡む 岩田太郎
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米住宅価格の上昇が鈍化している。しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ退治を目的に利上げを重ねた結果としての住宅ローン金利の倍増や、構造的な供給不足で価格の高止まりが続く。一部の米メディアは、住宅政策に対する米国民の不満が、2024年の大統領選挙で争点になる可能性を指摘している。
全米不動産業協会(NAR)は5月18日、4月の中古一戸建て住宅販売が3月から3.4%低下して428万戸となったのをはじめ、前年同月比では23.2%も下落したと発表した。こうした中、一戸建ておよび集合住宅を含む全米中古住宅価格の中間値は1.2%減少して38万8800ドル(約5462万円)となった。
米デジタル住宅取引サイトであるレッドフィンのチーフエコノミスト代理であるテイラー・マー氏は5月13日付のニュースサイト「インサイダー」で、「(FRBの金融引き締め維持により)この先1年ほどは30年物の住宅ローン金利が(21年の3%未満の倍である)5~6%にとどまる可能性が高い。しかも買い手が売り手より多く、価格が大きく下落することはない」と言明した。
米ニュースサイト「アクシオス」は4月12日付の分析で、「全米の州政府や市郡は、一般に手の届く価格での住宅供給を目指して、一戸建ての家が多い住宅地に(低所得層向け)高層集合住宅の建設を認めるゾーニング改革を提案しているが、(より裕福な)一戸建て指定地域の住民の抵抗で前進できない場合が多い」と指摘。
郊外で所得格差の摩擦
同記事はさらに、「一戸建て指定地域の住民は近隣に高層住宅が建つことで、自分たちが保有する物件の価値が下がることを懸念している。だが一部の専門家によれば、一戸建て地域を指定するゾーニングは人種隔離の結果をもたらしている」として、一見人種には関係のないように見える都市計画が、黒人などが白人地域に移り住まないようにする効果をもたらしていると…
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週刊エコノミスト
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