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ひと味違う中毒者映画 主演の演技がめざましい 芝山幹郎

©2022 To Leslie Productions, Inc. All rights reserved.
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映画 To Leslie トゥ・レスリー

 アルコール依存症の映画は数多い。「失われた週末」(1945年)をはじめ、「リービング・ラスベガス」(95年)や「クレイジー・ハート」(2009年)などは、主人公の姿と声がすぐに浮かび上がる。

 その列に新しく加わったのが「トゥ・レスリー」……と言いたいところだが、この映画の感触は、いわゆる「中毒者映画」とはやや異なっている。

 主人公レスリー(アンドレア・ライズボロー)は、テキサス州西部に住むシングルマザーだ。彼女は宝くじに当たり、19万ドルの賞金を手にした。その金で家を買い、地道に暮らしていくつもりだったが、アルコールという落とし穴があった。この罠にかかると、19万ドル程度の金はなし崩しに溶けていく。

 6年後、文なしになったレスリーは、仮住まいのモーテルを追い出される。持ち物はピンクのスーツケースひとつだ。金はない。友人もいない。頼れるのは、母の行状に呆(あき)れて去っていった息子のジェームズ(オーウェン・ティーグ)ぐらいだ。

 すでに成人した息子は、アパートの片隅に母を受け入れる。ところが母は、息子のルームメイトから小銭をくすねるわ、断酒の約束も破るわで、部屋を追い出されてしまう。毒親というより、だらしなさが極端なのだが、その病は治りそうにない。

 息子に追い出され、故郷の町で昔なじみの知人の家にしばらく転がり込んでも、飲酒癖は一向に矯正されない。周囲は、改めてレスリーをもてあます。彼女自身が自分をもてあましているのだから、当然のことだが。

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