新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

教養・歴史 アートな時間

仁左衛門が切なくかわいい放蕩息子の悲劇を上方型で上演 小玉祥子

平成30年12月京都南座『義経千本桜』「すし屋」いがみの権太=片岡仁左衛門 撮影:篠山紀信
平成30年12月京都南座『義経千本桜』「すし屋」いがみの権太=片岡仁左衛門 撮影:篠山紀信

舞台 六月大歌舞伎 義経千本桜

 義太夫狂言「義経千本桜」は源平の合戦で平家が敗れて後の世を舞台とし、歌舞伎の三大名作に数えられる作品だ。その中で、いがみの権太が主役の「すし屋」と狐忠信が活躍する「川連法眼館(かわつらほうげんやかた)」が、東京・歌舞伎座の「六月大歌舞伎」夜の部で上演されている。

 権太を務めるのは現代歌舞伎を代表する立役の片岡仁左衛門。

 平家の人々はあるいは討ち死にし、あるいは逃亡を続けていた。吉野(奈良県)ですし屋を営む弥左衛門は平家に恩があり、平維盛(これもり)を奉公人の弥助として匿(かくま)っていた。弥左衛門の息子の権太は放蕩(ほうとう)がたたって勘当の身だが、弥助の正体を知り、一計を案じる。

 権太には女房の小せんと息子の善太郎がいた。今回は「すし屋」に先立つ「木の実」からの上演。ここで維盛の妻、若葉の内侍(ないし)とその子の六代君が権太の妻子と遭遇し、「すし屋」の出来事の伏線となる。権太は源氏方に追われる維盛親子を助けるために自身の妻子を身代わりとし、詮議に訪れた梶原景時に差し出す。それを知らない弥左衛門は怒りにかられて権太を刺す。権太は苦しい息の下で真実を打ち明けて落命する。

 権太には大きく分けて江戸(東京)型と上方(関西)型がある。京都出身の仁左衛門は関西型で務めている。

「江戸の権太は格好良くてすっきりとしていますが、私は丸本物(義太夫物)の丸みを大事にしています。上方の権太にはかわいさがあります。ならず者ではなくて悪ガキです」と仁左衛門は話す。

 若葉の…

残り703文字(全文1353文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)が、今なら2ヶ月0円

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事