産業空洞化が進むドイツ 政府が脱炭素化に7.5兆円助成計画 熊谷徹
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ドイツのショルツ政権は6月5日、化学、製鉄、製紙などエネルギーを多く消費する業界の脱炭素化費用の一部を助成する計画を発表した。
ドイツの保守系日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』の6月5日付電子版によると、ハベック経済・気候保護相は、「我々は企業と気候保護契約(差額決済契約=CfD)を結び、二酸化炭素(CO₂)の排出量を減らすだけではなく、製造業の転換を加速し、産業立地ドイツを守る」と宣言した。
独政府は企業と15年間にわたりCfDを締結。政府は欧州排出権取引のCO₂価格などに基づいて、契約価格(CO₂・1トン当たりの排出のための価格)を決める。政府は、企業の脱炭素化費用の内、契約価格を超える部分を負担する。逆に脱炭素化費用が契約価格よりも低くなった場合、企業は差額を政府に返済する。
ドイツ公共放送連盟(ARD)は6月5日付ニュースサイトで、「助成を受けられる企業の条件は、CO₂の年間排出量が1万トン以上であること、企業の製造工程で使われる電力が100%再エネ電力であることが求められる。使われる水素は、グリーン水素など『EUタクソノミー』の仕組みを満たす水素に限られる」と報じた。
『南ドイツ新聞(SZ)』の6月6日付電子版によると、政府は助成を希望する企業に対して、8月6日までに、製造工程の脱炭素化計画を提出するよう求めている。計画を提出した企業は、今年末までに行われる入札に参加できる。参加企業は入札で脱炭素化にかかる費用を提示する。提示した費用が最も低い企業から、CfDを結ぶ権利が与えられる。
SZによると政府はこの計画のために約500億ユーロ(7兆5000億円)の助成金を投じる。助成金は、経済グリーン化の費用をカバーするための国の基金・気候保護エネルギー転換基金(KTF)から捻出。ドイツは2045年までにカーボンニュートラルの達成を目指しているが、ドイツの…
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週刊エコノミスト
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