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週刊エコノミスト Online ロングインタビュー情熱人

ラグビーにビジネス経験を還元――玉塚元一さん

「自国開催だった19年のW杯の盛り上がりは、ラグビー経験者として心底うれしかった」 撮影=武市公孝
「自国開催だった19年のW杯の盛り上がりは、ラグビー経験者として心底うれしかった」 撮影=武市公孝

ジャパンラグビーリーグワン理事長 玉塚元一/88

 日本中を熱狂と興奮の渦に巻き込んだラグビーW杯日本大会から4年。今年9月から始まるW杯フランス大会で日本代表のさらなる躍進を望むのが、昨年誕生した新たなリーグを率いる玉塚元一さんだ。(聞き手=元川悦子・ライター)

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「フランスW杯へリーグワンで若手が台頭」

── 2023年のラグビー・ワールドカップ(W杯)フランス大会(9月8日〜10月28日)の開幕が迫りました。

玉塚 自国開催だった19年の前回大会で日本代表は準々決勝に進出しましたが、今のチームは2大会連続8強入りできるだけの実力を備えていると僕は考えています。今大会の日本はイングランド、アルゼンチン、サモア、チリと同組で、相手も強いですが、何とか躍進してほしい。それが、昨年1月に開幕した「ジャパンラグビーリーグワン」にとっても非常に重要ですね。

 実際、リーグワンを通して成長している選手は少なくないんです。今年7月のサモア代表戦で初キャップを獲得したフランカーの福井翔大選手(埼玉ワイルドナイツ)、センターの長田智希選手(同)らもリーグワンで台頭した若手。新たな才能もどんどん出てきています。

── リーグワンでは各国の代表選手もプレーしていますね。

玉塚 はい。今のリーグワンは南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどの代表選手が約60人もプレーしています。サッカーでいえば、アンドレス・イニエスタ選手(元神戸、元スペイン代表)が何十人もJリーグにいるような感覚かな(笑)。ヘッドコーチもディビジョン1(1部)の12チーム中、半数以上が海外トップクラスの人材。質の高さは各方面から大いに注目されている。そういう意味でもすごく楽しみですね。

── ラグビー界としては、19年W杯成功を起爆剤にして、リーグワン開幕を迎えようとしていました。20年からの新型コロナウイルス禍もあり、誤算も生じたかと思いますが、ここまでの流れをどう見ていますか。

玉塚 19年W杯は「最も成功したW杯」といわれるほどの盛り上がりでした。普段、ラグビーを見ない一般層が、(日本代表の)赤白のジャージーを着てスタジアムに足を運ぶ姿を見て、ラグビー経験者の僕らは心底うれしかったし、ラグビーのポテンシャルを再認識したんです。さらなる進化のためには、それまで日本ラグビー協会が運営していたトップリーグを発展させ、独立組織にしていく必要があるという判断でした。

 我々としては、今年12月〜24年5月の3シーズン目までを「フェーズ1」と捉え、試行錯誤を繰り返しています。コロナ禍もあって当初、掲げていた1試合平均観客目標の1万5000人には届いていませんが、22年12月〜23年5月の2シーズン目の総観客数74万5000人は、50万人未満だったトップリーグ時代には考えられなかったものでした。

慶応4年時に同志社と決勝

── 今年5月20日に東京・国立競技場で行われた、埼玉ワイルドナイツ対クボタスピアーズ船橋・東京ベイのプレーオフ決勝も、約4万2000人の大観衆でしたね。

玉塚 僕自身、大きな手ごたえを感じました。トヨタ自動車やキヤノン、パナソニックなど、各チームの母体となるグローバル企業の経営陣が、本気でラグビーの強化に取り組んでくれています。「フェアプレー」や「オール・フォー・ワン」「ワンチーム」「自己犠牲」といったラグビーの持つ精神に共感してもらっている実感もあります。地域に根差してコミュニティーを広げる活動にも熱心なので、本当にありがたいですね。

 玉塚さんがラグビーと出会ったのは中学時代。フランカーとして活躍し、慶応義塾大学4年時の1984年には関東大学対抗戦で全勝優勝。全国大学選手権でも準優勝と華々しい実績を残した。決勝で戦った同志社大学のメンバー、平尾誠二さんや大八木淳史さんが神戸製鋼へ、土田雅人さんがサントリーへ進んで競技生活を続ける中、玉塚さんは現役に区切りをつけて1985年、旭硝子(現AGC)へ入社する。 玉塚さんはその後、日本IBMを経てファーストリテイリング社長兼COO(最高執行責任者)、ローソン社長などを務め、21年6月からロッテホールディングス(HD)社長に就任。ビジネスの世界でグローバルに活躍する。一方で、ラグビーともかかわり続け、21年10月にジャパンラグビーリーグワン理事長に、23年6月には日本ラグビー協会理事となり、ラグビー界の第一線で発展に全力を注ぐ。

「平尾誠二君とは大学選手権後も友人関係が続いた。彼が生きていたら、日本協会会長かリーグワン理事長のはず」

── 玉塚さんの人生の中で、大きな影響を受けた出会いは?

玉塚 やはり、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長と、大学の学年同期の平尾誠二君ですね。柳井さんは誰もが知る屈指の…

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