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経済・企業 ロングインタビュー情熱人

元サッカー日本代表からクラブオーナーに――秋田豊さん

「東北の人は深く知り合えば温かく迎えてくれる。本当にありがたい」 撮影=中村琢磨
「東北の人は深く知り合えば温かく迎えてくれる。本当にありがたい」 撮影=中村琢磨

サッカーJ3・いわてグルージャ盛岡社長 秋田豊/85

 元サッカー日本代表で屈強なDFとして知られた秋田豊さんが、Jリーグの監督を経てクラブ経営に乗り出した。舞台に選んだのは岩手県。その思いに迫った。(聞き手=元川悦子・ライター)

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── 2022年まで3シーズン、Jリーグ・いわてグルージャ盛岡(岩手県)の監督として采配を振っていた秋田さんが昨年10月、オーナー兼社長となったのは驚きでした。

秋田 僕が社長と聞いてびっくりした人も多いでしょうが、会社経営自体は初めてではないんです。17年に「サンクト・ジャパン」という会社を設立し、トレーニング用ゴムバンドの販売代理店の社長をした経験があったので、戸惑うことはありませんでした。監督業をしながら、前々から興味があったクラブ経営に気持ちが傾いていったのも確かです。

 社長就任の話が浮上したのは昨年9月。昨季までいわてのオーナー企業だった(英会話教室などを展開する)NOVAホールディングス(東京都)の稲吉正樹社長から「株を取得してオーナーも兼ねてほしい」というオファーを受けました。自分なりに熟考し、22年シーズンにJ3降格が決まった後に決断して、運営会社の株式33.4%を取得しました。

「リスクを冒す世界で生きてきたから飛び込めた」

── Jリーグを見渡すと、一緒にワールドカップ(W杯)の1998年フランス大会、02年日韓大会に出場した元日本代表の森島寛晃さんがJ1・セレッソ大阪の社長を務めるなど、元Jリーガーの社長は何人かいますが、オーナーは初では?

秋田 はい。親会社の支援のある立場とはまったく違い、僕の場合は経営責任を一手に負うことになるので、本当に責任重大なんです。身を削りながら社長をやるのは本当に勇気のいることですが、サッカー選手も監督もリスクを冒してピッチに立っている。自分は今までそういう世界で生きてきたので、思い切って飛び込めたと思います。

── いわての23年1月期の売上高は6億7200万円です。24年1月期の目標は?

秋田 同水準のキープですね。J2再昇格を目指すなら、まずチーム人件費の約2億円を維持する必要がある。その前提で経営計画を練りました。経費節減可能なポイントを精査して、最初に着手したのがキャンプのコストダウン。我々は寒冷地域なので、1月から3月初頭のプレシーズンは県外での練習が必須ですが、その費用だけで昨年は5000万円くらいかかっていました。

 今年は茨城県神栖市、静岡県御殿場市や、福島県のJヴィレッジでのキャンプの各移動・宿泊費を見直し、支出を抑えました。フロントの社員も18人から10人に減らし、個々の仕事の質向上を図りました。社員1人が広報、運営、チケット販売と3役担うこともあって大変ですが、親会社の支援がない以上、小規模所帯で回していくしかない。今は日々、スタッフを鼓舞しているところです。

── 今年から取り組んでいることは?

秋田 一つはホームゲームでのドリンク販売(コーヒーを除く)です。業者に任せず、クラブ側が直接手掛けて収益アップにつなげることを考えました。今年3月25日のホーム開幕戦の相手、アスルクラロ沼津の監督は代表の元同僚・中山雅史さんで、1800人以上の観客動員に成功しました。しかし、気温10度と寒かったのに、温かいドリンクの用意が少なかったせいで売り上げが伸びませんでした。

 次戦からはIHヒーターを導入したりするなど、僕自身が現場で陣頭指揮を執っています(笑)。今年からSSS席の年間シート(VIP席)を設定し、15万円で販売する試みも行いました。ほぼ完売したんですが、当日のベンチコートやひざ掛けの用意が足りず、観客に寒い思いをさせてしまった。快適な環境や雰囲気を作る難しさ、人を動かす大変さを日々痛感しています(苦笑)。

 J3の23年シーズンで、第18節を終えて7勝3分8敗の11位(7月16日現在)のいわて。そのオーナー兼社長となった秋田さんは93~07年の現役Jリーガー時代、鹿島アントラーズなどでフィジカルとヘディングの強い屈強なDFとして名を馳(は)せた。日本代表としても国際Aマッチ44試合に出場して4得点を挙げ、2度のW杯出場も果たす。引退後はJリーグ京都サンガ、FC町田ゼルビアでも監督を務めた。

ジーコに学んだマネジメント

── 秋田さんの現役時代のターニングポイントを三つ挙げるとしたら?

秋田 最初は鹿島での(元ブラジル代表の)ジーコとの出会いですね。ジーコがいたから自分は選手としても成長できたし、引退後に監督・経営者という道を選んだのも、ジーコからマネジメント術を学んだことが大きかった。「プロとは何か」を彼は常日ごろから体現していたし、技術・戦術・体力などあらゆる面でトップレベルにないといけないんだと痛感させら…

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週刊エコノミスト

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