三つ子の兄弟に起きた悲劇 播磨屋一門の父、長男、次男で演じる 小玉祥子
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舞台 秀山祭九月大歌舞伎 菅原伝授手習鑑 車引
歌舞伎座では二世中村吉右衛門の「三回忌追善」として、ゆかりの演目が揃(そろ)う「秀山祭九月大歌舞伎」を上演中。夜の部の序幕が「菅原伝授手習鑑 車引」で、吉右衛門が率いた播磨屋一門の中村又五郎が松王丸、その長男の中村歌昇が梅王丸、次男の中村種之助が桜丸を演じている。
「菅原伝授手習鑑」は延享3(1746)年に人形浄瑠璃で初演された。歌舞伎化されてからは「三大名作」のひとつに数えられる。右大臣にまで上ったが、藤原時平(しへい)に陥れられて失脚した菅原道真を軸に、関わった人々の悲劇が描かれる。全五段で「車引」は三段目にあたる。
松王丸、梅王丸、桜丸は三つ子の兄弟。父の白太夫は道真に恩があるが、松王丸は時平、梅王丸は道真、桜丸は天皇の弟・斎世(ときよ)親王に仕えていた。だが時平のために道真も斎世親王も失脚してしまう。
「車引」では三兄弟の対立が描かれる。梅王丸と桜丸は吉田神社に参詣に来た時平の牛車(ぎっしゃ)に襲いかかるが、松王丸に妨げられる。
三兄弟はそれぞれに異なる性格付けが施されている。梅王丸は荒事の役で、少年らしさと力強さにあふれる。衣裳は重く、3人がかりでないと着用できない太い帯を締める。時平の牛車のもとへ駆けつける際には花道を飛ぶように駆ける「飛六法」で入る。揚幕に入ってもはずみがついた体はすぐには止まらず、中では受け止める係が待ち受ける。再登場では大太刀を一本増やして3本差している。
一方の桜丸は二枚目で女方の俳優も勤めることがあ…
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週刊エコノミスト
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