教養・歴史アートな時間

上野と横浜でローマの息吹《椿姫》《トスカ》を味わう 梅津時比古

「椿姫」 (c)Kiyonori Hasegawa
「椿姫」 (c)Kiyonori Hasegawa

クラシック ローマ歌劇場 2023年日本公演

 ミラノ・スカラ座やウィーン国立歌劇場はもちろん素晴らしい。しかし、それはいわばワールドワイドの素晴らしさであって、誰が見ても文句が出ないぶん、ややもすると、地域の個性を表す、いわゆる“その国の味”からは遠ざかる面もある。

 むしろその地域のオペラ文化を体現しているのは、ドイツ・オーストリアなら、バイエルン国立歌劇場とかシュトゥットガルト歌劇場のほう。思い切ったこともできるし、固有のオペラ文化の面白さも出る。それはいわば体質に近いものだろう。

 イタリアにおいては、それは間違いなくローマ歌劇場である。この劇場は、1880年に創立されたコスタンツィ劇場を前身とし、幕開きはロッシーニ《セミラーミデ》。以降、マスカーニ《カヴァレリア・ルスティカーナ》、プッチーニ《トスカ》など現在も大人気の名作の初演を重ね、その後、王室歌劇場とされ、戦後は、ローマ歌劇場に名称を変えた。

 2014年に資金難に見舞われたが、それも乗り越え、昨年、ミケーレ・マリオッティが音楽監督に就任してからは、イタリア・オペラの独特の味を体現して、大注目を集めている。

 今回の来日は、そのマリオッティが指揮するヴェルディ《椿姫》(9月13日から東京文化会館)とプッチーニ《トスカ》(9月17日から神奈川県民ホールと東京文化会館)。《椿姫》は、映画で大成功したソフィア・コッポラが演出する。劇的、抒情(じょじょう)的、技巧的とソプラノのあらゆる要素が求められる主役の椿姫には、世界から引く手あ…

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