SHIBUYA TSUTAYA改装が示すレンタル複合店の終わり 永江朗
東京・渋谷駅前のスクランブル交差点近くにあるSHIBUYA TSUTAYAが10月31日から改装のため一時休業する。営業再開は2024年春の予定だ。
シブヤツタヤは書籍・雑誌やゲームソフトの販売とともに、映画のDVDや音楽CDなどのレンタル・販売を行う複合型書店だった。同店を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の発表によると、リニューアル後は書籍・雑誌の販売以外はカフェが中心になり、映像作品・音楽作品のレンタルは行わないようだ。
レンタルビデオ店との複合型書店が全国的に増えたのは1980年代後半から90年代にかけてだった。のちにCCCとなる蔦屋書店が大阪・枚方市に誕生したのが83年。家庭用ビデオデッキの普及とともに同社やゲオ、三洋堂書店などがチェーン展開していく。郊外の幹線道路沿いに駐車場を備えた店舗が増えた。
物販とは異なるビジネスとの複合は、書店界にとって革命的だった。当時ある書店主は「レンタルビデオは仕入れた1本の商品をうまく回転させればどんどんもうかる。しかもお客さんは借りるときと返却のときの2度来店してくれる。雑誌などのついで買いも多い」と筆者にそのうまみを語った。音楽CDが普及し、ビデオテープがDVDになり、ブルーレイディスクが加わり、レンタルとの複合は永久に続く業態かと思われた。
しかし、2015年、アメリカの有料動画配信サービスNetflix(ネットフリックス)が日本でのサービスを開始したことでレンタル複合型書店の運命は変わる。Amazon(アマゾン)プライム・ビデオやHulu(フールー)、U-NEXT(ユーネクスト)など定額見放題の配信サービスが次々と登場してレンタル利用者は激減した。レンタル複合型書店も業態転換を迫られた。
レンタルに代わる事業としては、カフェやシェアオフィス、フィットネスジム、100円ショップ、文具・雑貨販売などがある。しかし、レンタルでうまくいっていた立地が他の事業に向いているとは限らず多くは模索中だ。時代の変化は早い。経営者の判断力が問われる。
この欄は「海外出版事情」と隔週で掲載します。
週刊エコノミスト2023年9月19・26日合併号掲載
永江朗の出版業界事情 配信優位の中、レンタル複合店の終わり