教養・歴史アートな時間

初代国立劇場さよなら公演は大化の改新を背景にした愛憎劇 小玉祥子

左から中村米吉、尾上菊之助、中村梅枝 国立劇場提供
左から中村米吉、尾上菊之助、中村梅枝 国立劇場提供

舞台 通し狂言 妹背山婦女庭訓 第二部

 老朽化による建て替えのため、10月いっぱいで幕を閉じる初代国立劇場(1966年開場)では歌舞伎の最終公演「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」〈第二部〉を上演中だ。

 大化の改新を背景にした近松半二作品で明和8(1771)年に人形浄瑠璃で初演された。9月公演の同作〈第一部〉に続いての上演となり、演目の通し上演を柱のひとつとしてきた国立劇場にふさわしい2カ月続きの公演となった。

 天下を掌握した蘇我入鹿の前に立ちはだかったのが藤原鎌足、淡海(たんかい)親子。入鹿の妹橘姫と恋仲の淡海は烏帽子折求女(えぼしおりのもとめ)と身分を偽り、入鹿を倒す機会をうかがっていた。

 序幕が舞踊「道行恋苧環(みちゆきこいのおだまき)」。大和(奈良県)・三輪の里で烏帽子折として暮らす求女は隣家の杉酒屋の娘お三輪と恋仲になっていた。忍んできた橘姫の後を追う求女をお三輪はつけていく。求女は姫の着物に苧環(糸巻)の赤い糸を結び、お三輪は求女の着物に白い糸を結ぶ。

 二枚目の求女をめぐっての町娘お三輪と赤姫と呼ばれる高貴な橘姫の恋争いを舞踊仕立てで優美に見せる。三人がそれぞれ手に苧環を持っての所作が見どころだ。

 二幕目が「三笠山御殿」。入鹿の御殿に漁師鱶七(ふかしち)が鎌足のわび状を持って乗り込んでくる。入鹿は鱶七を殺害しようとするが、鱶七は動じず、屋敷の奥へと入り込む。そこに橘姫と後を追った求女がくる。求女は入鹿が奪った宝剣を取り戻せば、夫婦になると橘姫に持ちかける。

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週刊エコノミスト

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