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教養・歴史 アートな時間

政治家生命か孫娘の命か 緊迫の誘拐事件と記者会見がサスペンスフルに進行する娯楽映画 野島孝一

©️2023「おまえの罪を自白しろ」製作委員会
©️2023「おまえの罪を自白しろ」製作委員会

映画 おまえの罪を自白しろ

 社会派ミステリー作家・真保裕一の小説を水田伸生監督で映画化した。

 保守政治家一家の宇田家。内閣府副大臣の国会議員・宇田清治郎(堤真一)の幼い孫娘が誘拐された。政党の大物議員で、党の機密を握り、家族にも権威的な態度をとる清治郎。だが犯人からの要求は意外にも身代金ではなく、「明日午後5時までに記者会見を開き、おまえの罪を告白しろ」というものだった。父・清治郎に反発しながらも有能な秘書を務める次男の晄司(中島健人)は、清治郎にすべての罪をさらけ出すよう頼み込む。

 記者会見は開かれ、清治郎はかなりの党機密を明らかにした。だが、犯人は納得せず、さらなる会見が開かれたのだが。

 政党にとっては、「罪を告白する」ということは、党の利権を明らかにせよ、ということになる。そんなことが簡単にできるはずがない。告白すれば清治郎の政治家としての生命は終わりになる。だが、犯人の要求に従わなければ、孫娘の命が危ない。家族の信頼を裏切ることになる。清治郎の苦悩は大きく、晄司らは必死で説得に当たらなければならなかった。

 河にかかる橋の架け替えや、競艇場の移設など、地元議員団と組んだ政権党の汚れた利権が垣間見られる。そこが関東地方の某所だとすぐにわかるが、この映画はそうした暗部を暴き立てるような社会派映画ではない。サスペンス感をたっぷり盛り込んだ娯楽映画と解釈すべきだろう。

 傲慢と思えるほどのワンマンで、家族に君臨する政治家を堤真一が演じたが、イメージを一変させるほど強烈な個性を発揮した…

残り580文字(全文1230文字)

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