ガザ侵攻と世界経済 米は“原油価格上昇は限定的”との楽観論が多数派 岩田太郎
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パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの軍事衝突は、世界経済にどのような影響を及ぼしていくのか。米経済人の議論が始まっている。
米金融大手JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、10月13日付の株主向け報告書で、「ウクライナやイスラエル・ガザでの戦争はエネルギーや食糧価格、世界貿易や地政学的な関係に極めて広範なインパクトをもたらすだろう」と述べ、「現在は、世界で何十年も起こらなかったような、最も危険な時だ」との見解を示した。
世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエイツの創立者であるレイ・ダリオ氏も10月12日のビジネス・ソーシャルメディア(SNS)、リンクトインへの投稿で、「イスラエルのガザ侵攻やロシアのウクライナ侵攻は、下火にならずに他地域に波及していくだろう。私には、これらの紛争が当事者間に限定されたものから、制約のない超大国間の世界戦争に発展する確率が過去2年間に35%から50%へと上昇したように見える」と主張した。
しかし、こうした悲観論は一部にとどまり、短期的には楽観論の方が支配的だ。常に悲観的な経済予測から「破滅博士」の異名を取るニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授でさえ、10月12日付のブルームバーグのインタビューで、「市場は、イスラエルがガザを占領して多くの犠牲が出るが、紛争が限定的になることを織り込んでいる。だから、原油価格があまり上昇しない」と述べた。
米エネルギー関連コンサルティング企業であるピッカリング・エナジー・パートナーズのダン・ピッカリング最高投資責任者も10月10日付の英『フィナンシャル・タイムズ』紙の記事で、「市場は神経質になっているが、恐れおののいているわけではない。1970年代のオイルショックのような手に負えない危機とは見られていない」と指摘した。
脱グローバル化…
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週刊エコノミスト
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