週刊エコノミスト Online編集後記

谷道健太/平野純一

編集部から

 20年ほど前、中国河北省の張家口から長距離バスに乗ったら、車内テレビで「反日映画」の上映が始まった。八路軍が日本軍を撃破するたびに乗客は拍手喝采し、大騒ぎだ。

 なぜか北京市郊外で運行が打ち切りになり、乗務員が乗客に何かを聞いて現金を手渡し始めた。事情が分からず、「我是外国人」と告げると、乗務員たちは顔を見合わせた。「まさか日本人じゃないよな」とあせっていると感じ、「韓国人か」と聞かれるままにうなずいておいた。相手はホッとしたような顔になって「この金でタクシーに乗れ」と言い、多めの紙幣を渡してきた。

 今、世界でイスラエル政府やハマスへの怒りが高まっている。無関係のユダヤ教礼拝所やイスラム教徒を襲撃するといったヘイトクライム(憎悪犯罪)も横行する。そんなニュースを知るたびにあのバス乗務員とのやり取りを思い出す。

(谷道健太)

 追加的な財政政策は本来「緊急お助け隊」の役割だ。深刻な不況に陥ったら国民が困るから、例えば公共事業を増やす、減税して消費を喚起する……。それらの政策で景気が良くなり税収が増えれば、たとえ国債(借金)を出して行っても、いずれ返済できる。財政政策は、景気が極端に悪化するのを避ける助けになる。

 だが、お助けするどころか、経済に大ダメージを与えかねない存在になったのが1000兆円の国債の積み上がりだ。もし“崩壊”して国債価格が急落し、金利が跳ね上がれば、景気回復どころではなくなる。

 減税が議論されている。もちろん、物価が上がることで苦しんでいる人々への政策は必要だ。だが一方で国民はちゃんと見ている。「もう国におカネはないじゃないか」と。今度こそ、目先のことより崩壊の方がよっぽど恐ろしいと考え始めたように思う。

(平野純一)

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