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経済・企業 2023年の経営者

クラウド活用のシステム需要大――牧田幸弘・日本ビジネスシステムズ社長

Photo 武市公孝:東京都港区の本社で
Photo 武市公孝:東京都港区の本社で

日本ビジネスシステムズ社長 牧田幸弘

まきた・ゆきひろ
 1957年新潟県出身。同県立松代高校卒業、79年慶応義塾大学法学部卒業。同年日本アイビーエム入社、製造業担当営業部門に配属。90年退社。同年日本ビジネスシステムズ設立、社長就任。66歳。

 Interviewer 岩崎誠(本誌編集長)

>>連載「2023年の経営者」はこちら

── 2022年8月に東証スタンダードに上場しました。狙いは何だったのですか。

牧田 世の中がクラウドを活用する時代に入り、顧客のシステム構築において大きな依頼を受ける可能性が出てきました。ゆっくり成長していてはビジネスチャンスに対応しきれないという危機感も感じていました。大手の顧客から「この辺が限界だね」と言われる前に準備をして、責任を持った仕事がこなせるような組織にしていきたいと考えたのです。世の中のリソース(資源)を最大限活用して、しっかりした仕事ができるメジャーな会社に成長していかなければと思い、上場を決意しました。

── その効果はどうですか。

牧田 最大の効果は、多くの一般の人に知っていただけたことですね。長年の顧客以外への認知度が上がったと感じています。人材採用でも応募が増え、特にキャリア採用が順調に進むようになりました。社員の離職率の改善にも効果が出ていると感じています。

── 昨年11月に売り上げを約1.5倍、営業利益を約2倍にするという23年9月期から3カ年の中期経営計画を発表しました。

牧田 当社は、クラウドを活用した企業のシステム構築を専門にしていますが、この分野の需要が大きくなっているのは事実です。仕事の依頼はかなりいただいているのですが、それに対応する体制をどれだけ作れるかが大きな問題です。売上高は伸びていますが、営業利益率に関しては、まだまだ伸ばせる余地があると思います。ですが、少しずつ成長していると感じています。

── 事業を大きく三つに分けていますね。

牧田 はい。「クラウドインテグレーション」事業は、クラウド製品を顧客のIT環境用にカスタマイズして導入しています。当社ではマイクロソフトの「アジュール(Azure)」などのクラウドライセンス(認証)に、利便性の高い機能を独自に加えた自社のものを提供しています。その導入後に、安定した運用のため、保守やユーザーサポートなどを継続して提供するのが「クラウドサービス」事業です。事業規模が一番大きいのはライセンスや関連機器を販売する「ライセンス&プロダクツ」事業です。関連機器の販売に比べ、圧倒的にライセンス販売の比率が大きくなっています。米アマゾン・ドット・コムの「アマゾンウェブサービス(AWS)」もありますが、当社ではマイクロソフトのものがほとんどです。

── 今後の成長のポイントは?

牧田 当社は主に大手企業のクラウド事業に対してサービスを提供していますが、ユーザーアカウント数を合計すると約240万に上ります。全国の大企業グループのアカウント数を合計すると1400万程度と一般的にいわれており、当社はリーダーポジションに近いところにいると考えています。

 こうした実績を核にして、大手企業のデジタル活用のためのサービスを提供することが重要となっています。自前のコンピューターや古いソフトウエアで動いていたものを、最新のクラウドによるアプリケーションの設計で、新しいサービスに切り替えていく需要は大きいです。当社のプロジェクト型のシステム構築により効率的に仕事ができる環境を提供し、その後の保守、運用サポートにより、安心して使い続けてもらいたいと考えています。

「社員食堂」が話題に

── 生成AI(人工知能)が注目されていますが、取り組みは?

牧田 社内でも使っていますし、顧客にも積極的にサービスを展開しています。今年4月には「アイプリシティチャット」というサービスを始めました。企業が安全に「チャットGPT」を利用するために、どのような対策を取ればいいかをコンサルティングするサービスと、データが外部に出ないようにする仕様のチャットGPTをセットにして提供しており、好評を得ています。業務効率化のためには、生成AIをしっかり活用し、当たり前のように利用することが重要です。利用の定着化に焦点を当てた顧客伴走型のサービスを展開していきます。

── 福利厚生や社員の働く環境の充実に取り組んでいますね。

牧田 そうですね。社員食堂は「虎ノ門ヒルズ」に本社が移転した14年にオープンし、今では当社の特徴として認知されています。昼は社員食堂ですが、夜はレストランのように食事ができ、お酒も飲めます。社員のコミュニケーション活性化のほか、顧客との打ち合わせの後の軽い食事などにも効果を発揮しています。とても人気があり、名古屋と大阪の拠点にもオープンさせました。

 また、新卒で入社する若い社員が多く、地方からの入社も多いため、会社から30分以内で通えるところに社宅を用意しています。手ごろな値段で住むことができ、採用にも効果を発揮しています。

(構成=安藤大介・編集部)

横顔

Q これまで仕事でピンチだったことは

A 創業時です。最初は信用がなくて、融資を受けられませんでした。会社も狭く、仕入れたパソコンを会議室に置くこともできないような状態でした。

Q 「好きな本」は

A 『人新世の「資本論」』です。海洋汚染など世界中のいろいろな問題を考えると、経済活動をそこまで優先すべきなのかと考えさせられます。

Q 休日の過ごし方

A もっぱらゴルフをしています。「お金と時間の無駄」と思っていたのですが、レッスンに通い、真面目にやっていたら、スコアもまとまり、楽しくなりました。今ではネットワーク作りなどに役立っています。


事業内容:クラウドソリューションについてのコンサルティング、導入・運用・利活用に至る一連の支援など

本社所在地:東京都港区

設立:1990年10月

資本金:5億3963万円

従業員数:2547人(2023年9月末現在)

業績(23年9月期、連結)

 売上高:1128億円

 営業利益:41億円


週刊エコノミスト2023年12月19日号掲載

編集長インタビュー 牧田幸弘 日本ビジネスシステムズ社長

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