ドイツ連邦憲法裁判所がGX・DXへの予算流用に違憲判決 助成金の支払い凍結で産業界に不安 熊谷徹
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ドイツ連邦憲法裁判所(BVerfG)は11月15日、ショルツ政権がコロナ禍対策費のうち、600億ユーロ(9.6兆円)の国債発行権を、感染拡大とは無関係の特別予算「気候保護・エネルギー転換基金(KTF)」に流用したことを、憲法違反とする判決を言い渡した。政権はこの予算で各種のGX(脱炭素化)・DX(デジタル技術による変換)事業を予定していた。違憲判決により大半の助成金の支払いが凍結され、産業界に不安が広がっている。
BVerfGは憲法訴訟だけを扱う裁判所で、判決には控訴・上告ができない。独保守系紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』(11月16日付)によると、連邦政府は憲法の債務ブレーキ規定により、国内総生産(GDP)の0.35%を超える財政赤字が禁止されている。だが2020年にコロナ禍が、22年にロシアのウクライナ侵攻が発生。政府は大規模な財政出動を迫られた。連邦議会は20~22年を緊急事態に指定し、債務ブレーキの適用を免除。政府は20年3月、コロナ対策費用の財源として、経済安定化基金(WSF)を創設し、2000億ユーロ(32兆円)の資金を国債発行によって追加的に調達できるようにした。21年12月に就任したショルツ首相は22年1月、21年度向けの第2次補正予算を組み、余っていた600億ユーロのコロナ対策向けの国債発行権を、GXとDXを目的とするKTFに流用させた。
独紙『南ドイツ新聞』(11月15日付)によると、BVerfGは「連邦政府がコロナ予算をKTFに流用する際、予算措置が可能な理由を詳細に説明しなかったことや、21年度向け国債発行権を2年後、3年後に行使するのは憲法違反」と説明した。
独ニュース週刊誌『シュピーゲル』は11月23日付電子版で「リントナー財務大臣は、600億ユーロの穴を埋めるために23年度補正予算を組み、23年も緊急事態に指定して債務ブレーキ…
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週刊エコノミスト
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