「知性」の音楽と日仏交流 記念コンサート&シンポジウム開催 梅津時比古
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クラシック 日仏文化交流に尽力した作曲家たち
フランス音楽の夕べ・日仏会館創立百周年記念シンポジウム「日仏芸術交流の100年」関連
フランスと日本は文化的に互いに尊敬し合う独特の関係性を持ってきた。ヨーロッパを追いかけた日本がフランスを取り入れる面が多いのは事実だが、フランスではモネが着物姿の女性を描いたのをはじめ、特に美術においてヤポニスムの潮流が強く、他の欧米諸国とは異なる面を見せてきた。
日本では萩原朔太郎の詩句「ふらんすへ行きたしと思へども/ふらんすはあまりに遠し」に見られるように長年、フランスはあこがれの地であった。哲学も、1970年代以降、世界の中でも日本はフランス哲学の良き理解者である。サルトルの実存主義、フーコーの構造主義、デリダの脱構築などは日本を席巻したと言ってもよい。「読み直し」を芸術に位置づけ、世界中の舞台表現の潮流を方向づけたブランショは、フランス以外ではおそらく日本で最も高く評価されているだろう。
では日本のクラシック音楽はどうか。ドイツ一辺倒に思われがちだが、実はフランスの流れが重要な核を作っている。作曲家・池内友次郎がフランスのソルフェージュ(読譜)を東京芸術大学に導入したこと。桐朋学園大学の学長で作曲家の三善晃がフランスにおける作曲のエクリチュール(記述)を持ち込み、多くの作曲家を育てたこと。ピアニストの安川加寿子が演奏と教育の両面でフランスの流派を伝えたことなどが大きい。
フランスの流れの本質を一言で表すと「知性」。ドイツを中心にした音楽の本流が、ロマン主義であれ、表現主義であれ、壮大な想念、幻想を主体とする中で、少なくとも日本におけるフランス…
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週刊エコノミスト
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