『国産ロケットの父　糸川英夫のイノベーション』　田中猪夫著　日経BP　2200円

　国産ロケット開発の父と称される工学者・糸川英夫氏の生涯を、晩年の彼を知る著者がまとめた。戦争中は戦闘機開発に携わり、失敗を徹底的に研究して機体の性能を上げる翼を考案。終戦後はロケット以外にも、生み出した脳波記録装置で得た収入を優れた音色を奏でるバイオリンの開発に充てたり、創造的な組織に変革する工学の研究を始めたりと実に自由奔放。「逆境は成長のルーツ」と唱え続けた彼の、イノベーションを生む秘訣(ひけつ)が満載で貴重だ。（W）

週刊エコノミスト2024年5月14・21日合併号掲載

『国産ロケットの父 糸川英夫のイノベーション』　田中猪夫著　日経BP　2200円