外来種バスター――五箇公一さん
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国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室長 五箇公一/124
ごか・こういち 1965年神奈川県生まれ。幼少時に富山県高岡市に転居し、小学生のころは昆虫など生物の飼育に熱中。88年京都大学農学部卒業、90年同大学院修士課程修了、宇部興産入社。96年農学博士号取得、同社を退社し国立環境研究所の研究員。専門は保全生態学、ダニの研究で知られ、サングラス、上下黒ずくめのファッションでテレビなどにも出演。
テレビなどで“ダニ先生”として親しまれる五箇公一氏。サングラスに黒ずくめの“こわもて”ファッションが印象的だが、本職は国の研究機関の研究室長。日本固有の生態系に被害を及ぼす外来種の侵入阻止に日々奮闘している。(聞き手=和田肇・編集部)
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── 環境省は昨年10月、「外来種被害防止行動計画の見直しに係る検討会」を設置し、五箇さんもこの検討会の委員をしています。検討会は来年3月までにとりまとめを予定していますが、日本のこれまでの外来種侵入対策をどう評価していますか。
五箇 対策の効果が出ている種と対策が追いついていない種があります。(北米原産の)アライグマや淡水魚のオオクチバスなどは、生息域が広がりすぎて抑えきれていません。一方、(外来生物法に基づく「要緊急対処特定外来生物」指定の)南米原産のヒアリのような侵入初期で緊急に対策をしなければならない種は、国土交通省や農林水産省、自治体と協力して、港湾などで見つけ次第、確実に駆除しており、かなり抑えられています。
植物では、(南米原産の)ナガエツルノゲイトウや(北米原産の)アレチウリといった外来雑草は、分布面積が広いうえに、多種多様な環境にはびこっていて、一部を駆除してもらちがあかない状態です。(オーストラリア原産の)セアカゴケグモはすでにゴキブリ並みに日本全国に広がっていて、こうなるとちょっと対策が追いつきません。
── ヒアリやセアカゴケグモは毒を持つといわれます。
五箇 セアカゴケグモは攻撃性が強くないので、よほどのことをしない限り、かんで(刺して)くることはなく、死亡した例はほとんどありません。一方、ヒアリは巣ができてしまうと、巣を守るために働きアリが非常に攻撃性を持ちます。毒も人間に対しては強く、アレルギー体質の人はアナフィラキシーショック(強いアレルギー反応)を起こして死に至る例があります。“歩くスズメバチ”という感じです。
── 今後、侵入が懸念される危険な虫は?
五箇 今警戒しているのは、ツマアカスズメバチという中国南部原産のスズメバチです。すでに対馬(長崎県)に侵入しています。昆虫類を捕食するため日本の昆虫に対する影響が心配だし、電柱やマンションの壁に巣をつくる性質があるので、人間社会にかなり入り込んでくる可能性があります。現在、環境省と自治体、研究者、薬剤メーカーなどが協力して対策を進めています。対馬ではベイト剤(毒餌)を巣に持ち帰らせて、巣ごと退治する方法をとっています。今のところ、本州への侵入はなんとか防げています。
ダニに感じた生命のロマン
── 外来種全体で見ると、日本は危険な水準にあるのですか。
五箇 日本だけでなく、世界のどの国もすでにレッドゾーンを超えています。人流や経済、物流のグローバル化が進んでいるので、どの国も外来種問題は深刻な問題になっていますが、日本は島国で非常に固有性の高い生態系なので、被害を受けやすいのです。
「外来種バスター」の異名を持つ五箇公一さん。国立環境研究所(茨城県つくば市)で生態リスク評価・対策研究室の室長を務め、生物多様性や固有の生態系を脅かす外来種対策の最前線に立つ。原点にあるのは、幼少期から育った富山県高岡市の田園環境。さまざまな生き物が織りなす世界に魅了され、昆虫やザリガニ、カメなど捕まえては家に持ち帰り、飼育して観察する日々を過ごした。
── 子どものころは生き物のどんなところに興味を持ったのですか。
五箇 人間とは姿形がまったく異なる昆虫や爬虫(はちゅう)類などは、怪獣のミニチュアを見ているようで、それらを飼育して観察するのが大好きでした。マムシも飼ったことがあります。ちょっと町から離れれば田んぼが広がり、あぜ道には草花がいっぱい咲き、水田の中も今と違ってプランクトンの宝庫です。水をすくって顕微鏡で見ると何でもいる。小宇宙がそこに展開されているんです。
── 高校卒業後、京都大学農学部に進学します。
五箇 大学では2年生までバイクに乗って日本一周をしたりとか、遊んでばかりいましたね。3年生になって卒論の準備のためにいろいろな講座の実習を受け、ダニの実習で初めて顕微鏡でダニを見た時、ものすごく衝撃を受けました。それをきっかけにダニ学を専攻することにし、ダニの生態と進化をテーマに卒論を書いて修士号まで取ったのです。
── なぜそこまで衝撃を受けたのですか。
五箇 ダニは小さいので普段は見えませんが、顕微鏡をのぞくと、怪獣の絵のようなダニの姿が見えます。ちゃんとオスとメスがいて、メスを取り合ってオス同士がけんかするとか、生き様がそこにあるんです。こんなに小さな生命でも、自分の遺伝子を残すために、いろいろなドラマがあるんだと思い、その姿にロマンを感じました。
── ダニは人の血を吸ったり、アレルギー性疾患の原因になっ…
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週刊エコノミスト
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