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緊急提言②新型コロナ 果たして、レプリコンワクチンは安全なのか

安全性と効果は果たして
安全性と効果は果たして

 高齢者の新型コロナワクチン定期接種から、新たに登場したのがレプリコンワクチンだ。待望の国内メーカーによるワクチンである一方、「体内で増殖する」仕組みから、さまざまな議論を呼んでいる。その効果と安全性を、専門家とともに分析していく。

◇多くの健康被害を生んだコロナワクチン

 4月17日、新型コロナワクチン接種後に死亡した8人の遺族と、副反応の健康被害を受けた5人の計13人が国に対して、総額9152万円の損害賠償を求めて東京地裁に集団提訴した。

 また6月3日には、安全性の確証がないのに新型コロナウイルスのワクチンを特例承認し、接種を推進したとして、2回目接種の翌日に死亡した当時73歳の男性の遺族が、国と神戸市、ファイザーの日本法人に計約3200万円の損害賠償を求める訴えを神戸地裁に起こした。

 新型コロナワクチン接種後に健康被害にあった場合、遺族や後遺症患者が国に対して申請できる予防接種健康被害救済制度というものがある。これまで、そこに救済申請を行った数は1万2004件。そのうち国からワクチンによる健康被害と認定されたのは8180件であり、申請件数全体の約7割にあたる。また厚生労働省が「ワクチン接種と死亡との因果関係が否定できない」と認定した人は843件にのぼっている (9月26日現在)。

 では、なぜファイザーやモデルナといった従来の新型コロナワクチンで健康被害が相次いでいるのか。京都大名誉教授であり、薬剤疫学分野の専門家でもある福島雅典氏はこう語る。

「これまでに私たちが接種してきた生ワクチンや不活化ワクチンは、ウイルスや細菌そのもの、あるいはその一部を弱毒化したり、無毒化したものから作られています。しかし、ファイザーやモデルナのmRNAワクチンは新型コロナウイルスという病原体そのものではなく、人工的に製造したウイルスの遺伝子情報mRNA(※1)を人に投与することにより、体内で新型コロナウイルスの一部であるスパイクタンパクを作らせるという人類史上初めて使用するまったく新しいタイプのワクチンだったのです」

 厚労省のHPでは当初、「コロナワクチンは接種した腕の筋肉のみに留(とど)まる」と説明されていた。しかし、

「どんな注射を打っても、その部分のみに留まるということはあり得ません。血中に入ると、毛細血管などを通じて数分ほどで全身へ行きわたります。そのうえmRNAは人工脂質の膜で覆われているので、全身のあらゆる細胞の中に入ることができると考えられる。しかも体に抗体(※2)を作るために分解されづらいよう修飾されているので、人によっては体内でスパイクタンパクを長期間作り続けてしまいます。体のどの組織や細胞でどれくらい、いつまで作られて、どのように排出されるのかなど、わからない点が多いのです。私はその状態をオフターゲット(的外れ)、オーバープロダクション(過剰生産)、アウト・オブ・コントロール(制御不能)という言葉で説明しています」(福島氏)

 また、そもそもスパイクタンパク自体の毒性が高く、血管内や細胞を障害することにより、さまざまな病気を引き起こす原因になる点も問題視されている。

「スパイクタンパクが血管内皮細胞にあるACE2受容体(※3)につくことによって炎症反応が起こり、重症になれば血栓が形成されることもあります。血栓が心臓の血管で起これば心筋梗塞(こうそく)、脳の血管で起これば脳梗塞を引き起こすのです」(福島氏)

 厚労省のワクチン副反応を検討する専門家分科会によると、医療機関からの副反応疑い報告では心筋炎や心膜炎、血栓症が上位を占めている。

「問題は、それだけではありません。スパイクタンパクを生産する細胞というのは異常な細胞として認識されて、抗体により攻撃されてしまいます。そのためmRNAによりスパイクタンパクを作っている自分自身の細胞を、自分自身の免疫システムが攻撃してしまうのです。それにより自己免疫疾患や各臓器の機能不全など、あらゆる疾患が起こる可能性があります」(福島氏)

◇体の中で増えるスパイクタンパク

 接種開始後まもなくの頃、厚労省のHPでは、「成分は数日以内に分解されて、作られるスパイクタンパクも接種後2週間でなくなる」としていた。しかし、高知大特任教授の佐野栄紀氏らの研究チームによる調査では、異なる結果が出ている。佐野氏はこう話す。

「86歳の女性は2回目のmRNAワクチンを接種後、融合性斑状丘疹紅斑を発症しました。大小の紅斑が体幹や四肢などに広がり、融合したようになる症状です。その女性の皮膚病変は時間とともに広がり、3カ月以上続きました。発症から100日後に病変の免疫組織を調べたところ、体の真皮深部の血管内皮細胞と、汗腺の一つであるエクリン汗腺に、新型コロナウイルスのスパイクタンパクが検出されました。その患者さんには新型コロナウイルスへの感染歴がなかったことから、このスパイクタンパクはmRNAワクチンに由来する可能性が高いと考えられます。

 私たちはそれ以外にも、最長でワクチン接種後2年経(た)ってもまだ皮膚症状からスパイクタンパクが発現している患者さんを確認しています」

 佐野氏らの論文は「THE Journal of Dermatology」という皮膚科分野の査読付き国際ジャーナルに複数掲載されている。

 それでは、今月から高齢者の定期接種で新たに登場した、「mRNAワクチンの次世代型」とされるレプリコンワクチンはどうなのか。レプリコンワクチンは、既存のmRNAワクチンの改変型といわれる。注射でmRNAを投与する量は従来型より少なくして、その代わり人間の細胞の中に到達したあとに、mRNAを増やす仕組みになっていることから、「自己増殖型ワクチン」とも呼ばれている。レプリコンとは「複製」という意味だ。そのレプリコンワクチンが正式に承認されたのは日本が世界初だ。ベトナムや欧州でも申請が行われているが、まだ承認されていないので、日本人が「世界に先駆けて」接種することになる。

 本誌の取材に対して、日本における供給・販売契約を結んでいるMeiji Seika ファルマはこう説明した。

「mRNAというのは、そもそも非常に不安定なものです。そのため従来のmRNAワクチンの場合は30μ(マイクロ)g(グラム)(※4)とか60μgというように、接種の際に大量に使用する方法を取ります。しかし、レプリコンワクチンはそれを5μgと非常に少ない量にしています。その代わり複製酵素を入れることで、細胞内でmRNAを増やす仕組みです」

 体の中でmRNAが増えるのであれば、いつブレーキがかかるのか。そう不安視する声もあるが、どうなのだろうか。

「マウスの実験では、レプリコンワクチンを接種した部位でのmRNAの量は8日目から極めて低いレベルになりました。スパイクタンパク量が減るにはもう少し長い期間が必要ですが、それも15日目以降は検出されていません。増え続けるのではと心配される方もいますが、mRNAやスパイクタンパクを分解する体内の酵素が働くので、ずっと作り続けることはできません。このように接種後まもなく、検出されなくなります」(Meiji Seika ファルマ)

◇大規模接種時の効果や安全性は?

 同社によるとレプリコンワクチンは、新型コロナウイルスの感染を抑制する高い中和抗体価が得られるとしている。またその効果が、半年程度の長いあいだ持続するという。では、副反応はどうなのだろうか。

「レプリコンワクチンの臨床試験は先行してベトナムで実施されました。その際は、レプリコンワクチンとプラセボ群で約8000人ずつの治験が行われて、そこで心筋炎や心膜炎の報告例はありませんでした。また国内で実施した臨床試験でも、すべての有害事象、軽度の副反応などでもファイザー製ワクチンと同程度でした」(Meiji Seika ファルマ)

 一方、不安視する声もある。新型コロナウイルス感染症に対する対策の見直しを求める「全国有志医師の会」の一つである「高知有志医師の会」に所属する宜保美紀氏はこう話す。

「日本国内での臨床試験ではファイザー製ワクチンと比較して、レプリコンワクチンのほうが抗体価が高く、長く持続していること、また短期の副作用は同等だったということは公表されています。

 でも、その臨床試験に使ったのは今月からの接種となるオミクロン株JN.1対応のワクチンではありません。以前に流行した起源株に近いB.1変異株用のワクチンです。今回のオミクロン株JN.1対応のワクチンでは、動物実験の非臨床試験しか行われていないのです。しかもマウス8匹のみに投与した結果の抗体価しか公表されていません。

 従来のmRNAワクチンにおいては今、過去に前例がないほどの大きな薬害が起きています。しかもそれに対して、国は決して公平な精査をしているとは思えません。そういった現状の中で、mRNAそのものを体内で複製し、その増殖したmRNAからスパイクタンパクを量産していくという新しい機序のレプリコンワクチンが、マウスを使った非臨床試験のみで使用されていいのでしょうか。人間に大規模接種した場合の効果、および長期安全性についてはまったく不明といわざるを得ません」

◇ワクチン開発には本来10年は必要

 また薬剤疫学や医薬品情報学の専門家であり、東京理科大薬学部客員研究員の堀内有加里氏もこう話す。

「本来、ワクチンの開発には、有効性のみならず安全性の確認をするために、少なくとも10年は必要だといわれています。mRNAワクチンは、人間の体内でウイルスのスパイクタンパクを作らせるという人類史上初めて使用するタイプのワクチンですから今後、長期で見たときにどのような影響が体に出るかはまったくの未知数といえます。

 またレプリコンワクチンについては投与量が少なくてすむので、現行のmRNAワクチンに比べて、mRNAを包んでいる脂質ナノ粒子が持つ強い炎症による副反応は、抑えることができるかもしれません。でもスパイクタンパクを体内で増殖させることから、その血栓形成作用による副反応が起きることは十分に考えられます。また、人によっては大量にスパイクタンパクが作られるので免疫応答が強く誘導されて、その過剰な免疫反応が自己の細胞や組織に向けられ、さまざまな副反応を引き起こすリスクもあるでしょう。いずれにしても、ベトナムでの臨床試験開始からまだ3年しか経っていませんし、国内で第Ⅲ相臨床試験(※5)が始まってからわずか2年足らずです。実用化するには時期尚早ですし、安全性の確認は不十分といえます」

 さらに堀内氏は、ワクチンの承認システムそのものについても疑義を唱える。

「これまでのワクチンはウイルスや細菌、またはその一部を弱毒化、無毒化したものでした。また常用する薬と違って、接種回数は1~2回とある程度限定されています。だからワクチンの非臨床試験では、がん原性試験や遺伝毒性試験などは『通常、必要としない』と『感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドライン』に記載されています。でも、mRNAワクチンやレプリコンワクチンは人類史上初めて使用するタイプのワクチンであり、接種後どんな影響が体に出るかはまったくわからないのですから、一般の医薬品と同様の厳しい基準を設けるべきです」

 前出の宜保氏も、続けてこう話す。

「mRNAワクチンやレプリコンワクチンは、ワクチンというより遺伝子製剤といったほうがいい。欧州医薬品庁(EMA)の医薬品製造販売承認(MAA)やアメリカ食品医薬品局(FDA)のガイダンスによれば、投与後5年以上は経過を追うなどの厳しい規制のもとに管理されています。

 でもワクチンに分類して別のガイドラインを作ったことで、より簡単に承認が下りるようになったのです。緩い規制のもと承認をして、高齢者や基礎疾患のある重症化しやすい人に世界で初めて接種させるというのは、私には暴挙としか考えられません。なぜそこまで急ぐ必要があるのでしょうか。人体実験といわれても、仕方ないと考えます」

 本誌は、オミクロン株JN.1の承認の基準について厚労省に質問し、以下のような文書での回答を得た。

「23年5月、ICMRA(薬事規制当局国際連携組織)において、当時国際的に承認され、使用されているワクチンについては、新型コロナウイルスワクチンの株変更について十分な経験があることを踏まえ、株変更の薬事手続きの際に、必要な品質に関するデータ及び非臨床試験成績のみをもって速やかに株変更を認めるという方針についてコンセンサスが得られています」

 つまりは、レプリコンワクチンは以前に流行した起源株に近い変異株対応のワクチンですでに承認を得ているので、今度のJN.1株では一部変更承認という簡略化された非臨床試験でいいことになっている、ということだ。そのうえで「ワクチンの有効性及び安全性を評価し承認しています」という返答である。

◇閉ざされてきた健康被害の情報

 しかし堀内氏は、「mRNAワクチンにも同様の基準が採用されていました。最初に承認された起源株のmRNAワクチンは、接種開始当初から多くの健康被害が報告されていたにもかかわらず、『安全性について重大な懸念は認められない』として、その後の変異株ワクチンを一部変更承認してきたのです。そういった承認のシステムそのものに問題があります。ましてやレプリコンワクチンは、過去に承認されている起源株対応のワクチンですら、これまで予防接種として人に使用した実績がないのです」と指摘する。

 それについてMeiji Seika ファルマはこう説明する。

「国もリスクとベネフィットのバランスの中でワクチンの承認許可を与えています。では安全性が100%、1000%確認されるまで使ってはいけないのか。そうだとすれば、その間に感染症で亡くなる人も出てきます。今後、人においての有効性や安全性のデータは医療現場で安心して使っていただくためにも必要ですから、市販後のデータを蓄積し、それを国に報告しますし、医療機関にも提供します。安全性も含めた追跡調査をし、透明性をもってできる限り速報していきます。より安全なワクチンを作るというのは、我々の使命だと思っています」

 これまでmRNAワクチンによる健康被害の実態を、国は国民に積極的に情報公開してこなかった。また大手のテレビや新聞でもほとんど報道されていない。何より肝要なのは、広く情報が共有されることだ。

 新型コロナワクチンにより亡くなった遺族と、副反応の健康被害を受けた人たち計13人が集団提訴した、訴訟の原告代理人弁護士である青山雅幸氏はこう話す。

「新型コロナワクチンは過去最大の薬害事件であるにもかかわらず、国は国民に対して正しい情報を与えてきませんでした。その罪は、重いと言わざるを得ない。なぜなら国民が本来、有している自己決定権を、完全に侵害していることになるからです」

「自己決定権」とは、自分の生き方について公権力から干渉されることなく、自由に決定できる権利であり、憲法で保障された大切な「幸福追求権」の一つだ。

 先週、本誌で報じたとおり10月から接種できる新型コロナワクチンには5種類あり、医療機関により何を用意しているかは異なる。各病院や自治体に問い合わせれば、どのワクチンを自分が打つのかを知ることができる。

 なにより大事なのは、さまざまな治験や意見をもとに一人一人が納得してワクチンを接種する、あるいは接種しないと決めることだ。なぜなら、誰にとっても自分の体は決して代替の利かない、たった一つのかけがえのないものであるからだ。

 (本誌取材班)


※1 mRNAはタンパク質を作るために必要な遺伝情報のコピーを作成する役割を持つ。遺伝情報はDNA→転写→mRNA→翻訳→タンパク質の順に伝達される。mRNAワクチンには、スパイクタンパクを人間の体の中で作るためのmRNAが入っている

※2 抗体とは、病気の原因となるウイルスや細菌などが体内に入ったときに異物として攻撃し、体外に排除する役割を持つタンパク質のこと。抗体がその抗原(感染症における細菌やウイルスなど)と結合し、異物を体から排除する

※3 スパイクタンパクは、自然界に存在する新型コロナウイルスの表面にある。その部分が人間の細胞表面にあるACE2という受容体タンパク質と結合することにより、細胞内に入り込み、感染が起こる。mRNAワクチンは、注射でスパイクタンパクを体内に入れ、新型コロナウイルスに対する抗体をあらかじめ作るよう設計された

※4 μgは1mgのさらに1000分の1

※5 非臨床試験は、人に投与する前の段階で動物などで行われる試験。医薬品の安全性と有効性を評価し、人への投与に適格かどうかを判断する。人間に対する臨床試験には第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相と3段階がある。各段階で安全性や有効性を確認しながら進める。第Ⅲ相のほうが治療法の開発が進み、より承認に近い段階になる

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