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週刊エコノミスト Online サンデー毎日

緊急提言 新型コロナワクチンとは何か、を改めて問う 10月から高齢者の定期接種スタート

◇高齢者向け定期接種開始

 10月から、高齢者を対象とした新型コロナワクチンの定期接種が始まった。対象者は65歳以上と、60歳から64歳の重症化リスクの高い人だ。

 1回あたりの接種費用は1万5300円程度だが、国の助成により実質7000円となる。さらに各自治体からの補助も合わせると一般的に2000~4000円程度の自己負担額に抑えられる見込みだ。自治体によっては無料としているところもある。また定期接種の対象外の人は任意接種であり、原則的には全額自己負担となる。

 ワクチンは1700年代末、イギリス人医師が天然痘ワクチンを8歳の少年に接種したのが始まりとされている。以来、多くの先人たちの努力により、感染症の予防と治療の分野において一定の役割を果たしてきたといえる。

 左上の表は、今回供給される新型コロナワクチンの一覧だ。子どものころから、あまりワクチンについて考えることなく、行政や病院の勧めに従って接種してきた人も多いのではないだろうか。しかし、2020年の新型コロナの流行から4年を経て、現在は新技術によるワクチンも開発されている。自分の体内に入れるワクチンが、果たしてどんなものなのか。それを知っておくのは、とても重要なことだ。

 そこで、いま接種できる新型コロナワクチンについて説明していきたい。今回のワクチンはすべて、現在流行しているオミクロン株JN・1対応のものとなる。接種にあたり、どのワクチンを用意しているかは病院やクリニックにより異なるので知りたい場合は、自治体や医療機関にあらかじめ問い合わせるといいだろう。

◇組み換えタンパクワクチン

 まずは武田薬品工業の組み換えタンパクワクチンだ。これは不活化ワクチンによく似た性質を持っている。

 新型コロナ以前に、我々が接種してきたワクチンには大きく2種類ある。生ワクチンと不活化ワクチンだ。生ワクチンは、生きたウイルスや細菌などの病原性を弱めたものを体内に入れる。すると、それを免疫系が「外敵」と見なして、体に本来備わっている自然免役や獲得免疫が働く。それにより抗体ができて、実際にウイルスなどの「外敵」が体内に入ったとしても、すみやかに排除できる。生ワクチンを接種することにより、自然感染に近いメカニズムで病原体に対する抗体ができる仕組みだ。BCGや麻疹(はしか)・風疹ワクチン、水痘、おたふくかぜのワクチンが代表例である。

 そして不活化ワクチンは自然のウイルスなどから感染力をなくした(不活化させた)病原体やその一部から作られる。感染性をなくしても、病原体の特徴はそなえているので、人間の体に投与すると抗体ができる。不活化されて免疫をつける力が弱いことから、何度か打つ必要のあるワクチンもある。日本脳炎、帯状疱疹(ほうしん)やインフルエンザなどのワクチンがこれにあたる。

 一方、組み換えタンパクワクチンは、病原体のタンパク質の成分を遺伝子技術により複製して作られたもので、生ワクチンや不活化ワクチンとは違い、ウイルスそのものは使用しない。この組み換えタンパクワクチンはB型肝炎ワクチンなどにも用いられてきた、すでに使用実績のある技術だ。

◇mRNAワクチン

 新型コロナウイルスの流行時に特例承認されたのが、このmRNAワクチンだ。これには、過去にない新しい技術が使われた。コロナ禍で多くの人が接種したファイザーやモデルナもこのmRNAワクチンである。どういうものか、改めて説明しよう。京都大名誉教授の福島雅典氏は話す。

「mRNAの技術はこれまでとはまったく別次元のものといえます。新型コロナウイルスという病原体そのものではなく、人工的に製造したウイルスの遺伝子情報mRNA(※1)を人の体に投与することにより、体内で新型コロナウイルスの一部であるスパイクタンパクを作らせるという人類史上初めて使用するタイプの〝遺伝子ワクチン〟だったのです」

 mRNAをワクチンに用いるアイデアは数十年前からあったが、なかなか実用化には至らなかった。m RNAを体内に入れると異物として認識されて炎症反応が起き、あっという間に体から排除されてしまうというのが問題点だった。

 そのためmRNAを構成する物質の一つである「ウリジン」を「シュードウリジン」というものに改変することで、体のRNA分解酵素により直ちに分解されることなく、また体の免疫システムに異物として認識もされずに、体内にとどまりやすくなった。

「その改変されたmRNAは人工脂質の皮膜で覆われています。それが細胞内に入ると細胞の中でmRNAから大量のスパイクタンパクが作られます。それを人間の体の免疫が見つけて、抗体ができるという仕組みとされています」(福島氏)

 スパイクタンパクとは、自然界に存在する新型コロナウイルスの表面にもある、棘(とげ)のような突起物だ。その部分が人間の細胞表面にあるACE2という受容体タンパク質に結合することにより、細胞内に入り込み、感染が起こる。そのACE2がたくさんあるのが鼻や喉などの気道、腸管や血管内皮といった器官だ。またACE2をどれだけ持つかは個人差があり、加齢によっても変わってくる。mRNAワクチンは、このスパイクタンパクに対する抗体をあらかじめ体に作らせることで、自然感染や重症化を防ごうと設計されたものといえる。

◇レプリコンワクチン

 そして今回から新たに投与が始まるのが「次世代型mRNAワクチン」といわれる、レプリコンワクチンだ。これは米バイオ企業アークトゥルス・セラピューティクスが開発したワクチンであり、Meiji Seika ファルマが日本における供給・販売提携に関する契約を結んでいる。9月19日に開催されたワクチン分科会で厚生労働省により薬事承認されたばかりという名実ともに、新しいワクチンだ。このレプリコンワクチンが正式に承認されたのは世界初であり、日本人が「世界に先駆けて」初めて定期接種することになる。

 創薬科学や免疫医学の専門家であり、東京理科大名誉教授の村上康文氏はこう話す。

「レプリコンワクチンは、いままでのmRNAのいわば改変型ということができます。注射でmRNAを投与する量は従来型より少なくして、その代わり人間の細胞の中に到達した後に、mRNAを増殖させるという仕組みにしています」

 レプリコンワクチンは注射による接種量は既存のmRNAワクチンの6分の1から12分の1ほどに抑えられる。その代わり、細胞内に到達するとmRNAが増えることから「自己増殖型ワクチン」とも呼ばれている。

「スパイクタンパク質を作るmRNAに加えて、それらをコピーして増殖する役割を果たす酵素のレプリカーゼ、この二つを連結させているのです」

 Meiji Seika ファルマの資料によると、レプリコンワクチンは新型コロナウイルスの感染を抑制する高い中和抗体価が得られるとしている。またその効果が、半年程度という長いあいだ持続するという。その一方で、細胞内におけるmRNAの増幅期間は短く、接種後はおよそ1週間程度で極めて低いレベルになるとしている。

◇心筋炎や血栓症の健康被害報告

 今回、接種できるワクチンの大まかな特徴を説明してきた。しかし、ここでもう一つ、考えなければいけないことがある。それはファイザーやモデルナの従来型のmRNAワクチンで、これまでに報告されている健康被害だ。本誌では、昨年5月から6月にかけて、その健康被害の特集を組んだ。それについて改めて検証してみたい。

 厚労省によると、新型コロナワクチンを接種したあとの医療機関からの「副反応疑い報告」は3万7091件、その中で重篤症例は9014件にのぼる。うち死亡報告は2204件ある(4月21日報告分まで)。国はコロナワクチンとの因果関係をα、β、γで評価し、そのうち99%を「因果関係不明」のγだとしている。だが、たとえ国による認定がないとしても、医療の現場でさまざまな患者や病気と接する医師たちが、「これはコロナワクチンによるものかもしれない」と考えて国に報告した結果である、という事実は重い。

 この医療機関からの副反応疑い報告では、心筋炎や心膜炎、血栓症というのが上位を占めている。

 昨年の小誌の取材では、全身の倦怠(けんたい)感や脱力感から1㍍先のトイレに行くのも苦労する、あるいはブレインフォグにより集中して物事を考えることができない、といった重篤な症状を持ち、「日常生活もままならない」と訴える後遺症患者もいた。

 さらには、これとは異なる別の報告もある。それが、新型コロナワクチン接種後に健康被害が生じた場合、遺族や後遺症患者が国に対して救済を申請できる被害救済制度だ。これまで、そこに救済申請を行った数は1万1942件。そのうち国からワクチンによる健康被害と認定されたのは8153件で、申請件数全体の約7割にあたる。また「ワクチン接種と死亡との因果関係が否定できない」と認定されたケースは835件にのぼる(9月18日現在)。国は死亡一時金として、約4530万円を支給している。

 この薬害による被害者の数を、どのように捉えればいいのだろうか。薬剤疫学や医薬品情報学の専門家であり、東京理科大薬学部客員研究員の堀内有加里氏はこう解説する。

「過去45年間(※2)の新型コロナワクチン以外のすべての定期接種のワクチンで、予防接種による健康被害認定件数は3522件となっています。それと比較して21年春から始まった新型コロナワクチンは、約3年半という短い接種期間にも関わらず、8153件と、その健康被害認定件数は2倍以上にのぼっています。同様の基準で、これまでワクチンによる死亡一時金や葬祭料が支払われたのはわずかに151件。しかし新型コロナワクチンの場合は835件と、過去すべての認定死亡者数の5・5倍超なのです。これはもう異常な数字としか、いいようがありません」

 堀内氏によると、1995年から2021年度までの27年間で、新型コロナワクチンを除くすべてのワクチンの総接種回数は約8億回。それに対して新型コロナワクチンは約3年間(21年2月~24年4月)で総接種回数は約4億回となっている。

◇なぜ接種の見直しがないか疑問

 これほどの死亡者数が認定されながら、なぜ新型コロナワクチンは一度も中止されることがなかったのか。それが疑問だとも、堀内氏は指摘する。

「新型コロナワクチン以前は、予防接種に伴う有害事象があった場合は、一時的にせよ接種を中止してきました。たとえば75年、DPTワクチン接種後に2例の死亡例があったときは、調査のために一度中止されています。百日咳の治療法が限られていたことにより調査終了3カ月後に再開されましたが、その後81年にワクチンが改良されました。11年、小児用肺炎球菌ワクチンとHibワクチンを同時接種したあとに死亡例の報告があり、その際には、両ワクチンは約3週間接種を中止しているのです。

 今回、新型コロナワクチンでこれほどの健康被害と死亡例が報告されているにもかかわらず、なぜ一度も接種が中止されないのでしょうか。ワクチンは通常、健康な人々への予防のために打つものですから、死亡者や後遺症患者が出るリスクは限りなくゼロでなければいけないはずです。現在の国の対応は、前例がないものだといえます」

 当初、mRNAワクチンは、新型コロナのパンデミックに対応するという目的により臨床試験から10カ月という短い期間で特例承認されたものだった。

「本来、ワクチンの開発には、有効性のみならず安全性の確認をするために、少なくとも10年はかかるといわれています。しかもmRNAワクチンは、人工的に作ったコロナウイルスの一部の遺伝子情報を人の体の中に投与して、その体内でウイルスのスパイクタンパクを作らせるという人類史上初めて使用するタイプの遺伝子ワクチンでした。接種後、どのような影響が体に出るかはまったくの未知数だったのですから、ここで一度、立ち止まる必要があります」(堀内氏)

 では、このmRNAワクチンがなぜこれほどの健康被害を生んだのか。前出の福島氏は、その理由について「人工脂質の皮膜で覆われたmRNAが細胞内に入ると、その中でmRNAから大量のスパイクタンパクが作られるという仕組みそのものが、じつは健康被害を生むという大きな問題を抱えています。そこに、疑問の余地はまったくありません。厚労省に上がっている死亡報告や重篤報告、副作用報告が、なによりそれを証明しています」と語る。

 次回はその作用機序を改めてひもとくと同時に、一部のネットメディアなどでは不安視する声も聞かれる「mRNAの次世代型」レプリコンワクチンの場合は果たしてどうなのかを、より詳しく検証していく。

※1 mRNAはタンパク質を作るために必要な遺伝情報のコピーを作成する役割を持つ。遺伝情報はDNA→転写→mRNA→翻訳→タンパク質の順に伝達される。mRNAワクチンは、スパイクタンパクを人間の体の中で作るためのmRNAが入っている

※2 1977年2月から2021年末までの累計


◇10月からの新型コロナワクチン(供給量は見込み)

●組み換えタンパクワクチン  供給量 約270万回

武田薬品工業…………………ヌバキソビッド筋注

●mRNAワクチン       供給量 約2527万回

ファイザー…………………………コミナティ筋注

モデルナ……………………スパイクバックス筋注

第一三共……………………………ダイチロナ筋注

●レプリコンワクチン     供給量 約427万回

Meiji Seika ファルマ…………コスタイベ筋注用

(本誌取材班)

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