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2025年私立中学入試最新情報 受験率上昇で厳しさ増す中 改革を進め選ばれる学校は

中学入試・開場を待つ受験生たち=東京・千代田区
中学入試・開場を待つ受験生たち=東京・千代田区

 中学入試の受験校をそろそろ決める時期だ。厳しい入試状況が続く中、我が子に合った学校をどう選べばいいのか。そんな時に参考にしたいのが専門家の意見だ。中学受験のエキスパート11人に、注目校を聞いた。

 首都圏の中学入試は、受験生数増加が継続していたが、2024年入試では少子化の影響もあり減少した。しかし受験率はアップしている。保護者の私立校教育への信頼の高さの表れだ。25年入試について日能研入試情報室室長の井上修さんが次のように話す。

「模試の受験状況をみると受験生数は前年とほぼ同じになりそうです。首都圏の小学6年生の人数は減少していますので、受験率はさらにアップし、厳しい入試状況が続きそうです」

 そんな中、志望校に合格するためにどうやって学校を選んでいけばいいのか。本誌と大学通信では、首都圏と関西圏の有力塾など、中学入試のエキスパートにアンケートを実施し、25年入試の注目校を挙げてもらった。84㌻の表を参照してほしい。

 最初に首都圏の「人気がアップしそうな学校」をみてみよう。エキスパートは入試変更や学校改革などに注目している。

 神奈川男子御三家の浅野は、募集人員を30人減らして240人にする。1クラスを45人から40人に減らすためだ。例年、1700人以上が出願する人気校のため競争率アップは必至とみられている。明治大付中野は、募集人員を30人増やして270人とし、1クラス40人未満の7クラス編成に変更する。いずれも丁寧な教育で男子を育てる姿勢を強化している。

 豊島岡女子学園は25年から算数・英語資格入試を導入。英検の級(スコア)を点数化し、算数の試験と合計で判定する。安田教育研究所代表の安田理さんが話す。

「小学校で英語が必修化され、低学年から英語を学習し、英検を取得する子どもが多くなっています。その結果、中学入試で英語の資格を利用できる方式が増加しています。でも豊島岡女子学園のようにトップ校で英語資格利用入試を実施するのは珍しいですね。高いスコアを持つ受験生にとっては負担が少ない入試になります」

 山脇学園は2月3日午後に理数探究入試を新設する。24年にスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定され、理系教育に注力している。光塩女子学院と日本女子大付は2月1日午後に算数1教科入試を新設。併願校選びの幅が広がっている。

 学校改革も多い。明法は19年に高校を共学化したが、中学も男子校から共学化する。東京女子学院は25年から英明フロンティアに校名変更し高校を共学化、中学は翌26年から共学化する。千代田国際は中高共に千代田に校名変更する。新たに研究と開発の2コースを設置し、多様な研究活動から学びの本質を探る授業を行う。

 大学との提携も熱心に行われている。宝仙学園は順天堂大と系属校協定を結び、通称名が順天堂大系属理数インターとなった。同時に医学部への内部進学枠が設けられ、25年から医学進学コースを新設する。順天は26年に医療系総合大学の北里大と法人合併し付属校になる。併せて北里大への内部進学も開始される予定だ。期待感から早くも志望者が増えている。

中学入試・受験会場に入る受験生=大阪・大阪市天王寺区
中学入試・受験会場に入る受験生=大阪・大阪市天王寺区

関西も受験率アップ 共学化で志望者増?

 中学入試の志望校選びでは、直近の大学合格実績が重視されることが多い。そのため、大学合格実績が伸びた学校は、翌年の中学入試で人気がアップすることが多い。エキスパートも合格実績の伸長に注目する。

 聖光学院は24年度の東大合格者が100人で過去最高の実績だった。井上さんが話す。

「高校3年生用の自習室が備えられるなどラーニング・コモンズが充実し、環境が整っています。難関大合格だけでなく海外大進学対策もしています。実際に学校を訪問すると良さが分かり、さらに人気が高くなっている学校です」

 鷗友学園女子は東大に13人合格し、前年度の3人から4倍以上に増加。頌栄女子学院は早慶の合格者数を伸ばした。

 浅野、海城、武蔵、豊島岡女子学園、洗足学園、市川、栄東、渋谷教育学園渋谷などのトップ上位校は安定した実績が評価されている。それに続く攻玉社、サレジオ学院、城北、巣鴨、逗子開成、東京都市大付、本郷、吉祥女子、十文字、田園調布学園、普連土学園、穎明館、大宮開成、駒込、桜丘、淑徳、東京都市大等々力、安田学園なども実績が伸びている。

「受験生や保護者に勧めたい学校」では、伝統校や上位校の評価が高い。麻布、栄光学園、開成、慶應義塾普通部、芝、城北、桐朋、立教池袋、立教新座、桜蔭、湘南白百合学園、フェリス女学院、国学院大久我山、栄東、成蹊、東邦大付東邦などだ。足立学園、佼成学園、聖学院、成城、大妻中野、国府台女子学院、聖和学院、桜美林、駒込、昌平、東京成徳大、明星学園、安田学園などの中堅校からも多く選ばれている。安田さんはこうみる。

「エキスパートは堅実な教育で穏やかな校風の学校を選んでいます。キリスト教や仏教など宗教を基にする学校も多い。人間性を育てる教育を高く信頼しています」

 一方、関西圏はどうだろうか。日能研関西・進学情報室室長の森永直樹さんが次のように話す。

「中学受験人気が継続しています。学校説明会への参加状況をみても人数は減っていません。今春は受験生が増加しましたが、25年もほぼ同じ規模になるとみています。首都圏と同じく、少子化で小学6年生の人数が減少しますので、受験率はアップしそうです」

 そんな中、24年に男子校から共学校に移行した滝川の勢いが止まらないという。男女ともに志望者が多く、難度アップが予想される。親和は、新たに共学部が設置され、女子部との併置になる。埼玉の開智と教育連携を行って学びを深めていく。また、法人名が変更されるため初芝立命館は利晶学園大阪立命館に名称変更する。

 大学合格実績が伸びている学校も多い。神戸海星女子学院は、小規模校のため目立たないが、難関大合格が可能な学校だ。文系だけでなく医学部合格者も増えている。高槻は17年の共学化以降難度がアップ。共学化後の生徒が卒業し難関大合格実績が伸びている。

「受験生や保護者に勧めたい学校」では、教育の中身を確立しながらも時代の変化に対し柔軟な対応ができる学校が選ばれている。多様な体験ができる学校だ。

 エキスパートが挙げる学校はいずれも良質な教育内容の学校だ。我が子がのびのび過ごせる学校選びの参考にしてほしい。

(大学通信・大野香代子)

<サンデー毎日10月13日号(10月1日発売)より>

サンデー毎日2024年10月13日表紙(表紙・北山宏光)
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