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全国241私立大推薦入試情報 入試のメインストリーム!? 学校推薦型選抜の攻略法は
総合型選抜と学校推薦型選抜を合わせた、いわゆる年内入試で私立大に入学する学生は、6割を超えている。今や大学入試のメインストリームと言っても過言ではない学校推薦型選抜入試の現状と活用法をみていこう。
公募制と指定校制を合わせた学校推薦型選抜(推薦)は、年明けの一般選抜の規模を上回る入試になっている。受験生にとって推薦のメリットは、導入している大学の多くで年内に合格が決まること。大学にとっても、少子化により学生獲得が厳しくなる中、早期に学生を確保できるメリットがある。受験生と大学それぞれにとって有意義な推薦は、年々規模が拡大している。
推薦の主流は、学力を調査書の評定平均値などで担保した上で、志望理由書や小論文、面接などで合否を判定するもの。そのため、一般選抜のいわゆる一発勝負に弱いタイプの受験生でも、積み重ねてきた学力やさまざまな活動歴などが判定されるので、推薦なら難関大にチャレンジしやすい。
実際、早稲田大・社会科学部の全国自己推薦入試は、高校時代のさまざまな活動歴を重視し、「いわゆる受験勉強に力点をおいてきた人とは一風異なった『+αの個性』を持つ人」が対象とある。評定平均値で学力、面接で意欲、小論文で知識の活用力を総合的に判断する入試だ。慶應義塾大・文学部の自主応募制の推薦は、出願条件の評定平均値が4・1以上と高いが、自己推薦書などの書類選考に加えて、理解力や文章力を問う小論文形式の総合考査で合否が決まる。同志社大は出願要件を満たせば、大半の学部が書類審査および面接と小論文で学科試験はない。予備校関係者は言う。
「学校推薦型は高校生活を多面的に評価する入試。志望校が求める推薦要件を満たすなら、積極的に活用するといいでしょう」
71㌻からの「全国241私立大推薦入試情報」には、慶應義塾大や同志社大以外にも、上智大、青山学院大、法政大、明治大、関西大などの難関大が掲載されている。どの大学も一般選抜の倍率は高いが、評定平均値や課外活動実績などが課される分、推薦の倍率は一般選抜より低いことが多い。
「難関大の推薦は、出願要件のハードルが高く、小論文などもハイレベルな思考力や表現力が求められます。一般選抜でも合格できる学力が求められますが、高校時代の頑張りというアドバンテージがある受験生にとって、競争相手が少ない分、有利な入試です」(前出の予備校関係者)
「推薦入試情報」の表には、日東駒専(日本大、東洋大、駒澤大、専修大)、産近甲龍(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)などの準難関大のほか、津田塾大などの女子大や理工系大など、幅広い受験生の第1志望となりうる大学の名前も並んでいる。
公募制の推薦は、学力試験を課さないケースが主流だが、関西地区を中心とした西日本では、学力試験を主体とした推薦を行っている大学もある。例えば、龍谷大は文系型が英語と国語、理系型は英語と数学または理科の学力試験の結果と、調査書などの審査を合わせて合否判定をする。一般的な推薦は小論文や面接対策が必要になることが多いのに対し、学力型は一般選抜対策がそのまま推薦でも役立つので、受験生の負担が少ない入試方式と言える。学力型の推薦は、京都産業大や大阪工業大、近畿大、摂南大、阪南大、神戸学院大、甲南大なども実施している。これらの大学の中で規模が大きいのは近畿大で、2024年度入試(一般公募)では、5万人近い志願者を集めている。
通常の推薦は合格すれば入学しなければならない専願制が多いが、これらの大学は、他大学との併願が可能なことも特徴だ。専願制では、必然的に第1志望の大学を受験することになるが、併願可能な大学なら、推薦で合格大学を確保した上で、実力相応もしくは憧れの大学を一般選抜で受験することができる。
東洋大が新方式導入 入試戦線への影響大
学力試験中心で併願可能という制度は、関東の大学でも拡大の兆しがある。25年度入試から東洋大が導入する「基礎学力テスト型」は、この二つの特徴を併せ持つ。合格発表日が12月10日なので、一般選抜の出願前に合否が分かるため、東洋大が第1志望の受験生はもちろん、より上位の大学を目指す受験生にとっては、東洋大の入学権利を保持した上で、難関大にチャレンジが可能だ。代々木ゼミナール教育総合研究所主幹研究員の坂口幸世さんは言う。
「関西で幅広く受け入れられてきた推薦の様式が、関東でも広がりそうです。東洋大の基礎学力テスト型導入の他大学への影響は大きい。東洋大より難易度が高い大学を目指す受験生は、一般選抜で押さえの大学を受ける必要がなく、受験校数を減らすことができます。東洋大の規模を考えると、準難関大より下では志願者が減少する大学が出てくる可能性があり、関東の私立大入試に与える影響は大きいでしょう」
東洋大以外にも、併願を認める大学は全国に広がっており、25年度は、東京工科大が全学部で併願可能な「公募制」を設ける。入学手続きの締め切り日は2月28日で、他大学の一般選抜と併願をしやすくしている。同様に名城大は、専願制で実施していた公募制推薦入試に「併願制」を追加。広島修道大も全学部で「公募・併願」を導入する。すでに実施している大学(一部の学部・学科や方式のみの場合がある)には、獨協大や日本工業大、桜美林大、順天堂大、大正大、大東文化大、昭和薬科大、愛知学院大、京都橘大、桃山学院大、九州産業大、福岡工業大などがある。
このように、一般選抜と組み合わせて、効果的な受験プランを立てることができる大学がある一方、多くの大学は専願制としている。入学者の4割を推薦組が占める中、専願制でミスマッチが起きていないか心配になる。代ゼミの坂口さんは言う。
「専願制の推薦に出願していいのは第1志望の大学のみです。この大学なら入れそうだからという考えは捨ててください。一般選抜までに学力は伸びますし、その一般選抜は倍率が低下傾向なので、一般選抜を視野に入れながら推薦を活用すべきです」
第1志望の大学の入学機会拡大もしくは、一般選抜を含めた入試戦略の一環と、推薦は2通りの活用方法がある。この点を踏まえた上で、出願先を検討してみてはいかがだろうか。
(大学通信・井沢秀)
<サンデー毎日10月13日号(10月1日発売)より>