アウディが北海道で風力発電を訪ねるプレスツアー③日本で3番目の広さ、6000年かけて形成された「サロベツ湿原」
再生可能エネルギーを巡り、アウディ・ジャパンが北海道で9月10~11日に開催したプレスツアー「アウディ・サステナブル・フューチャー・ツアー」。アウディの最新電気自動車(EV)に乗り、初日の10日は北海道最北地域、稚内にある巨大な蓄電池施設を備えた北豊富変電所や28基の風車が立ち並ぶオトンルイ風力発電所を取材した。その合間に、日本で3番目の広さを誇る「サロベツ湿原」を訪ねたので、紹介したい。
広さは6700ヘクタール
同湿原は稚内からは南に40キロほど、日本海に面している。広さは6700ヘクタールあり、これは、国内では釧路湿原、厚岸の別寒辺牛湿原に次ぐ大きさだ。
サロベツという地名は、アイヌの人たちが、この地域を「サル・オ・ペッ」と呼んでいたことに由来する。日本語では「湿原を流れる川」を意味する。
現地では、サロベツ・ネイチャー・ガイドの長谷部真さんが案内してくれた。元々、東京出身だが、北海道を旅行して気に入り、2003年に釧路の環境調査の会社に就職。15年にサロベツ・エコ・ネットワークに転職し、湿原の案内をしている。
泥炭が1年に1ミリ沈殿
長谷部さんによると、1万年前、サロベツは海とつながる大きな湖だったという。そこで生えた植物が枯れて、分解されないまま泥炭となって積み重なり、現在の湿原となった。「泥炭が溜まる量は1年に1ミリ、湿原の深さは6メートルあるので、6000年かけて形成された」(長谷部さん)。
湿原には、訪問者のために、「サロベツ湿原センター」が整備され、そこを拠点に、一周1キロメートルの木道の外周路(所要時間30~40分)と800メートルの内周路(所要時間20~30分)の二つの見学コースがある。センターを出ると目の前に、湿原の中にクレーンがある船のようなものが、見えてくる。かつての泥炭の浚渫船という。泥炭はピートモスや土壌改良剤などとして使われた。
ラムサール条約に登録
湿原は、腰くらいまでの高さの草に覆われている。「春や秋に雁やカモの仲間などの渡り鳥が来る。世界的にも貴重な湿原として、ラムサール条約で認められている」(長谷部さん)。コハクチョウやオジロワシなども見られるようだ。訪ねたのは9月なので、もう、あまり花は咲いていなかったが、それでも、エゾリンドウなどがところどころ、咲いていた。
湿原の向こう側には、風車もたくさん見えた。今回の見学は走り足だったが、広大な湿原は一人で訪れ、物思いに更けながら、ゆっくりと散策するのにも向いているだろう。(稲留正英・編集部)
(終わり)