経済・企業 挑戦者2024

障害者が活躍できる職場づくりを支援――垣内俊哉さん

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

ミライロ代表取締役社長 垣内俊哉

かきうち・としや
 1989年愛知県生まれ。生後1カ月で「骨形成不全症」と診断。幼少期から車椅子生活。高校中退後、2008年に立命館大学経営学部に入学、在学中の10年に株式会社ミライロを設立。12年同大学卒業。

 障害者がしっかり企業の戦力になるように、障害者が会社を辞めない風土を作りたいと社長の垣内さんは語る。(聞き手=和田肇・編集部)

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 収益は大きく分けて、障害者の雇用や職場での働き方などに関する企業のコンサルティング事業が約半分。障害者や多様な方たちに対応していくための教育研修事業「ユニバーサルマナー検定」が約半分という状況です。「ユニバーサルマナー検定」は多数の企業に取り組んでいただき、現在まで延べ約22万人が合格しています。個人でも受験できます。

 さらに、障害者手帳を電子化した「ミライロID」の普及にも取り組んでいます。「ミライロID」はスマートフォン向けの障害者手帳アプリで、2019年にリリースしました。これがあれば、わざわざ障害者手帳を出さなくても、交通機関での確認や求められるサポート内容などを簡単に提示できます。

 企業へのコンサルティングは、障害を持つ顧客にどう対応すればよいか、職場の障害者にどう対応したらよいかに大別されます。職場の障害者対応では、工場でのバリアフリーといったハード面のアドバイスもあれば、職場で障害者にどう接するかというソフト面のアドバイスもあります。

 一般的に障害者への対応は、「無関心」か「おせっかい」のどちらかになりがちです。車椅子の障害者がテーブルやデスクに来たとしましょう。すると一般的には、車椅子だからテーブルの椅子をどけてあげようとなる。ですが、普通の椅子に移って座りたいという障害者もいます。したがって大切なのは、まずは「椅子をどけますか、それとも椅子に移りますか」と聞くこと、コミュニケーションをとることです。当社のプラットフォームには多くの障害者の方が登録しており、実際にはコンサルというよりも、その方たちの声を企業や自治体に届けるというイメージです。

「歩く」を断念から出発

パリ2024パラリンピックの開会式に参加した(最前列の車椅子が垣内さん)
パリ2024パラリンピックの開会式に参加した(最前列の車椅子が垣内さん)

 生まれつき骨が弱くて折れやすい病気だったので、子どもの頃から車椅子でした。高校生の時に「どうしても歩けるようになりたい」と思い、高校を中退し、手術と治療に専念して歩けるようになろうと頑張りましたが、かないませんでした。それから義肢装具士になろうと思ったのですが、工具を使うことができない。それならばそういう会社を経営してみようと思ったのが起業のそもそもの動機で、10年にこの会社を設立しました。

 障害者が企業で活躍し、企業も発展していく。そうした成功例を増やしていくことが、私たちが目標としている「障害者に関わる環境、意識、情報のバリア解消の実現」に向けた、一つの道筋ではないかと思っています。

 新しい取り組みの一つとして、障害者向け商品専用Eコマース(電子商取引)の拡大に取り組んでいます。例えば、視覚障害者の発案で開発された「雨音低減傘」など、障害者向け商品は増えつつあります。障害者にとってそうした商品のニーズは強い一方でそうした商品を開発している会社も結構あるのですが、なかなか一般のECサイトでは見つけにくい。ここはかなり伸びていく余地があると見ています。


企業概要

事業内容:バリアフリーに関わるコンサルティング、教育研修事業、プラットフォーム運営事業

本社所在地:大阪市淀川区

設立:2010年6月

資本金:1億5000万円(資本準備金含む)

従業員数:49人


週刊エコノミスト2024年10月15日・22日合併号掲載

垣内俊哉 ミライロ代表取締役社長 障害者の企業での活躍を支援

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