学校徴収金の管理は任せて!――森山裕鷹さん
SA-GA代表取締役CEO 森山裕鷹
教育現場の負担削減を──。給食費や教材費などの徴収業務を一括代行する「学校PAY」を開発し、普及を図っている。(聞き手=徳永敬・ライター)
一昔前まで現金で徴収されていた給食費や教材費などは、今や口座引き落としがほとんどです。このお金の流れには「学校」「金融機関」「保護者」の三者が登場しますが、学校PAYはその三者の間に入って、収納を代行するサービスです。
学校は毎月、金融機関のフォーマットに沿った口座振替の請求データを作成し、スケジュール通りにデータを送らなければなりません。各家庭が利用する金融機関は複数あり、データ送信も複数になります。ところが、ほとんどの公立校では、事務職員は1人か、2人。作業が膨大なため、担任クラスを持つ教員が分担する学校もあります。国は「学校徴収金会計業務の負担から教員を解放する」としていますが、そうすると事務職員に業務が集中することになり、なかなか進みません。
この「負担が大きい」という現場の声を聞いて、開発に取り組みました。年度当初にデータを学校PAYに取り込むと、あとは全て自動的に振り替えられるようにしました。年度途中に変更がある場合は、その部分だけ変えればいい。未納があった場合の対応もシステムで自動化されるので、学校で未納状況を一つ一つチェック・管理して、文書を作成する手間も省けます。ある自治体での調査によると、システムによって事務量は全体の56.5%が削減され、「集金業務」に限れば76.6%削減されました。
佐賀モデルを全国に
現在、佐賀県内の吉野ケ里町など1市2町の公立校で利用されているほか、今秋には武雄市、福岡県桂川町でも採用される予定です。今後、県内の企業と協業して営業を拡大し、1年半後には佐賀県内のシェア52%を確保する計画です。もちろん、将来的には協業会社、支援企業を広く募集し、全国展開を目指します。
もともとは、ITエンジニアとして、ブロックチェーンやAI画像処理に関心があり、いろいろなご縁があって学内起業(2018年)しました。地元企業から製造ライン上での商品チェックシステムを受託開発したり、老人ホームでの監視カメラによる「高齢者見守りシステム」(徘徊(はいかい)者探知装置)を作ったりしていました。実はその延長線で、学校PAYが生まれたのです。
学校内に設置された監視カメラを、子供たちの安全を守るためにもっと活用できないか──。学校に見学にいったところ「カメラより、もっと困ったことがあるんです……」と相談を受けたのがきっかけでした。それから、銀行法や資金決済法などを必死に勉強して、自分たちができること、できないことを仕分けして、21年2月にサービス提供を始めました。
「佐賀大学発ベンチャー」の認定(21年11月)を受けているということもあり、現在は佐賀を拠点にしていますが、「今、ここ(佐賀)に課題があるから」との思いも強くあります。
東京や福岡での起業を考えなかったわけではありません。でも、都会は予算も人も潤沢ですが、地方の公立校はそうはいかない。まずは、佐賀モデルを確立し、全国展開につなげたいと思います。
企業概要
事業内容:学校PAYなどの決済システム開発のほか、画像解析/最適化アルゴリズムの開発・応用などの共同開発・受託開発
本社所在地:佐賀市
設立:2018年9月
資本金:300万円
従業員数:3人+アルバイト数人
週刊エコノミスト2024年8月6日号掲載
森山裕鷹 SA-GA代表取締役CEO 学校徴収金の管理は任せて!