観光業界をリードする企業へ――佐々木文人さん
羅針盤代表取締役 佐々木文人
コロナ禍が過ぎ、円安を追い風に訪日外国人が増加中。ツアーや着物レンタルなど多種多様な取り組みで観光業を盛り上げる。(聞き手=永野原梨香・ライター)
「日本の観光をリードし、文化を次世代につなぐ」を掲げ、訪日外国人向けの観光業を中心に事業を展開しています。利用者は年間10万人。これを2024年中には、30万人へ拡大したいと動いています。
最も大きな事業は、トラベル事業です。訪日外国人観光客向けのツアーを、主に東京と京都で催行しています。東京・築地での街歩き(1人当たり1万4000円)や京都・祇園で舞妓(まいこ)さんに会える体験(1人当たり2万円)などが人気です。ツアー情報は「トリップアドバイザー」などの「OTA」(オンライン専用旅行会社)に掲載しているので、これを見てツアーを予約し、参加するという海外の方が多いですね。
4月からは、築地場外市場のスペースを借りてすし握り体験を実施していました。これが好評だったのですし握り体験専用の自社施設「Sushi making class in Tsukiji」を築地にオープン。7月からは、そこですし握り体験(1人当たり8000円~)を開催できるようになりました。もう一つ、築地では2月から、ペダルをこぐと電気でアシストの入る自転車「E-bike」をレンタルできる店舗をオープンし、ガイドツアー(1人当たり8000円)も始めました。東京駅、人形町、清澄白河、深川などを3時間で回ります。免許がなくても乗ることができるので、海外の人も安心です。
傾向的に欧米の方には街歩きツアーは、よく売れます。人の話を聞くこと、知識を得ることにお金を払う傾向があるようです。
日本人の利用も多い事業が、着物レンタル事業です。コロナ禍中はインバウンド需要が必要な事業は地をはっていましたが、着物レンタルだけは日本人の利用で成り立っていました。
現在、着物レンタル店「wargo」は全国で7店舗あります。2月にプレシリーズAで4億円の資金調達した当初、用途目的の一つに、wargoの店舗数増を挙げていました。方針としてはその通りなのですが、まずは集客数の多い店舗を大型化しようと7月、京都駅前京都タワーサンド店を25坪から90坪へと増床しました。
そのほかにも、空き家などを活用した宿泊施設運営といった宿泊事業、自治体などの観光への取り組みを支援する地域プロデュース事業にも力を入れています。
上場を目指して
着物レンタル事業などを手掛けていた「和心」から同事業を買収するために22年12月に設立された「インバウンドコンソーシアム」が23年4月、社名を「羅針盤」へ変更。そのタイミングで私が当社の代表に就任しました。同年8月には私が創業したトラベル事業などの「ノットワールド」と、10月には宿泊事業の「エアトリステイ」と合併し、今の姿になりました。
「観光といえば羅針盤だよね」と認識されるよう、今の事業に力を入れつつ新規事業の立ち上げやM&A(合弁・買収)で、事業領域を拡大していかなければなりません。そして、26年には上場したいと考えています(ツアー価格などは今後、変更になる可能性があります)。
企業概要
事業内容:宿泊管理事業、トラベル事業、着物レンタル事業、地域プロデュース事業、ガイドコミュニティー事業、メディア事業
本社所在地:東京都中央区
設立:2022年12月
資本金:1億円
従業員数:64人
週刊エコノミスト2024年7月30日号掲載
佐々木文人 羅針盤代表取締役 観光業界をリードする企業へ