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「モンスト依存脱却へeスポーツに勝機」木村弘毅 ミクシィ社 長編集長インタビュー/919 

モンスト依存脱却へeスポーツに勝機 木村弘毅 ミクシィ社長(撮影=中村琢磨)
モンスト依存脱却へeスポーツに勝機 木村弘毅 ミクシィ社長(撮影=中村琢磨)

モンスト依存脱却へeスポーツに勝機

 Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

── ミクシィといえばソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の会社として世の中に知られていますが、いまは中身が変わっているようです。事業構成と売り上げを教えてください。

木村 昨年度の売上高1890億円のうち、スマートフォンゲーム「モンスターストライク(モンスト)」を主力とするエンターテインメント事業が93%、SNSのメディアプラットフォーム事業は7%です。私たちは当社を「コミュニケーション屋」と定義しています。私の視点では、ミクシィとモンストは、友人や家族と一緒に使うサービスとしてまったく同じものです。

── 電車では一人でスマホゲームをしている人が多いですが、モンストもそうなのでは?

木村 一人での利用は多いですが、すべてのシーンで一人で遊ぶようにゲームを設計してはいません。ゲームに登場するキャラクターを育てて、友達と会った時に、持ち寄ることを理想的な遊び方として捉えています。バーベキューを楽しむように、ゲームを楽しむ空間を提供することで差別化しています。

── モンストのアクティブユーザー数や累計ダウンロード数は?

木村 累計ダウンロード数は4600万です。アクティブユーザー数は、公表はしていませんが、2年前、モンストを出して3周年のタイミングが最も多かった時期です。減少傾向だったのですが、劇場版アニメ映画「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」を公開(2016年12月)し、映画館の周辺に集まったユーザーにモンストのアイテムをプレゼントするキャンペーンを仕掛けて、狙いが当たりました。今年は5周年に向けて映画の第2弾を準備中で、10月公開です。

── モンストで遊ぶ子どもも多いでしょう。高額課金を防ぐための施策はあるのですか。

木村 モンストの場合、16歳未満への課金は月額5000円を上限としています。ただ、ユーザーの属性を確認する場合、アプリをダウンロードする際のプラットフォームを提供しているアップルとグーグルから、年齢などユーザーの属性を当社は得ることができません。協議を重ねていく必要がありますが、相手は米国企業なので、交渉は難しい面があります。

── 未成年が25歳などと申告する問題が出てくるのですか。

木村 そうです。ゲーム業界とともに声を上げていく必要があると考えています。

ジムの買収も?

── 業績はモンスト頼みです。新しい収益の柱を育てる必要は。

木村 日本の国策としてeスポーツを育成しようという動きが出てきています。サッカーや野球、バスケなどのチームスポーツのように、仲間と一緒に戦うことができる文化を育てることが私たちのミッションとしてあると考えています。

── eスポーツ市場が拡大したとして、どう収益化していきますか。

木村 ゲーム競技として十分な視聴者数を獲得することができれば、スポンサーがついて、広告収益も入ってきます。リアルのスポーツと同じです。当社は1大会当たり賞金総額が5000万円と日本では最も賞金規模が大きな大会を開催しています。モンストだけで大きなユーザーがいるので、単独で開催できるのです。ただ、みなさん見て楽しいと思えるゲームとなるかどうかは、まだ時間がかかると思います。

── 祖業のSNSの現状は。

木村 SNSは、会員数が増えていくと、人間関係図がどんどん大きくなってしまい、自由にものが言いにくくなるという課題があります。ただ、家族や友人とSNS上でコミュニケーションしたいというニーズは間違いなくあると考えており、別の形のSNSを展開しています。それが「みてね」という家族内限定で写真アルバムを共有するSNSを新たに展開しています。

── 創業者の笠原健治会長が手掛けているものですね。

木村 そうです。規模の大きな汎用(はんよう)SNSではなく、家族や友人で切り取った小さなSNSのニーズが今後、出てくると仮説を立てていました。「みてね」が右肩上がりで伸びてきていますので、正しかったと認識しています。

── 今後、第5世代(5G)移動通信システムが始まります。成長に向けて温めている構想は。

木村 スポーツと「ウェルネス(健康)」が次の成長領域です。あらゆるものをつなげる5Gが重要になります。スポーツジムなどリアルな店舗を接点として、高齢者が健康情報を把握し、管理できるような仕掛けです。そのためにジムなどリアルな場所を使った展開が不可欠だと考えています。従来、IT業界は「持たない経営」が賢いとされてきましたが、ジムの買収などもあるかもしれません。

── チケット転売サイトを運営する子会社や社長が商標法違反(商標権侵害)の疑いなどで書類送検される事件が起きました。

木村 会社としての若さが出てしまいました。ガバナンスとコンプライアンスにしっかりと対応します。森田仁基前社長(6月22日社長辞任)が書類送検されたことも厳粛に受け止め、引き続き捜査に協力していきます。ただ、当社グループとしては商標法違反に対する認識はなく、検察庁の判断を待ちたいと考えています。

(構成・浜田健太郎=編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A ソーシャルアプリの企画など、ものづくりばかりやっていました。

Q 「私を変えた」本は

A 『ポジショニング戦略』(アル・ライズ他著)です。マーケティングの本ですが、人の脳の中で何がどう動いているのかを理解することが重要だと指摘しています。

Q 休日の過ごし方

A 子どもの面倒を見ることです。妻は大学で先生をしていて、子どもの世話(の分担)をしっかりやるようにしています。


 ■人物略歴

きむら・こうき

 1975年生まれ 東京都立杉並高校卒業、東京都立大学工学部中退。電気設備会社、携帯コンテンツ会社を経て2008年ミクシィ入社。14年11月執行役員、取締役を経て18年6月から現職。東京都出身。42歳。


事業内容:ソーシャル・ネットワーキングサービス「mixi」運営など

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2000年10月

資本金:96億9800万円

従業員数:776人(2018年3月現在、連結)

業績(18年3月期、連結)

 売上高:1890億9400万円

 営業利益:723億5900万円

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