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収益安定へコンテナ船事業3社統合 池田潤一郎 商船三井社長 編集長インタビュー/924

    池田潤一郎 商船三井社長
    池田潤一郎 商船三井社長

    収益安定へコンテナ船事業3社統合

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── コンテナ船事業で海運3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)が4月に統合して新体制になりました。狙いを説明してください。

    池田 当社の中心事業でしたが、大規模な外国の船会社との競争に負けるようになり、赤字が続きました。検討の結果、3社で統合し、一定の規模を確保して世界の大規模な船会社に対抗することにしました。

    ── 統合会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」で想定外の混乱が当初ありました。

    池田 従業員の習熟度の問題で混乱し、顧客に迷惑をかけました。3社がそれぞれ自社のコンピューターシステムを使っていたところに新しいシステムを導入し、トレーニングは積んでいましたが、いきなり3倍の荷物が来るので不慣れな面がありました。いまは改善しています。

     商船三井のコンテナ船事業は2017年度106億円の経常赤字。ONEの経常損益は出資比率(商船三井は31%)に応じて各社の経常損益に案分される。

    ── コンテナ船の黒字化はどう達成するのですか。

    池田 船会社は輸送サービスの元請けとして鉄道にコンテナを載せる契約を担いますが、統合効果で陸上運賃を下げることができます。海上輸送も3社が1社になり船を減らすこともできます。ONEは3年間で1100億円のコスト削減ができるとの予想でしたが、かなりは初年度で達成できる見込みです。従って、当社のコンテナ船事業も黒字になると算段しています。

    ── もう一つ大きな柱として自動車輸送船があります。

    池田 かつては日本の自動車メーカーが国内で生産し、海運会社が米国、アジア、欧州に輸送した後に空荷で戻っていました。ピストン輸送を繰り返す単純なビジネスモデルでも収益を確保していました。最近は日本からの輸出が減って、現地生産が増え、米国から欧州、欧州からアフリカ、アジアから米国といった、日本を起点としない荷物の動きがとても増えています。日本の自動車メーカーからこうした輸送をたくさん依頼されていますが、小口の輸送になり、船の使用率や積載率が下がるので、採算的には苦しい面もあります。日本メーカーだけに頼るのではなく、欧州メーカーなどにも営業を強化する必要があります。

    池田潤一郎 商船三井社長
    池田潤一郎 商船三井社長

    砕氷船でLNG

    ── タンカーやばら積み船など足元の海運市況はどうですか。

    池田 鉄鉱石や石炭、穀物などを運ぶばら積み船のマーケットはひところに比べ回復傾向です。一方、原油タンカーの市況はよくないです。地球温暖化問題などにより石油は需要の伸びに重しがあります。

    ── 一方でLNG(液化天然ガス)はロシアの北極海からの輸送が話題になりました。

    池田 クリーンエネルギーのLNGへの輸送需要は今後も伸びるに違いありません。当社は積極的に投資しており、シベリア北西部の北極海に突き出したヤマル半島から砕氷船を使って航行する、技術的にも非常に挑戦的なプロジェクトに参画しました。欧州から日本までの北極海航路はスエズ運河回りの航路に比べると3分の2の日数で着くので、燃料コストが低減できます。とはいえ砕氷船の建造コストは高いので採算に乗せるのは簡単ではありません。

    ── LNGを海上で液化、気化させる設備も手掛けています。

    池田 頭文字を取って「FSRU(浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備)」と呼んでいます。従来、LNGを受け入れるには沿岸にタンクなど陸上施設が必要で、建設費も巨額です。発展途上国の間には、手っ取り早くエネルギーが欲しいという場合、FSRUへのニーズがあります。陸上基地に比べても初期費用が安く、早く立ち上げることができるため、世界中でこのプロジェクトが立ち上がっています。インド、バングラデシュ、エジプトなどでFSRUに対する需要があります。

    ── 船員育成の大学をフィリピンに開校しました。

    池田 フィリピンでは船員の育成を国策として進めていて、海員学校、商船大学が多くありますが、教育レベルが下がってきていると感じていました。欧州の基準を満たさない船員育成機関の卒業生を当社は採用できません。検討の結果、自営の商船大学を設立することにしました。

    ── 日本人船員の養成は。

    池田 日本は産業として船員の職を多く提供できないため、船員養成の大学への志望者も減っています。そこで、当社は一般大学の卒業生を採用し独自に船乗りを養成しています。

    ── 事業としては小さいかもしれませんが客船はどうでしょうか。

    池田 絶好調です。団塊世代中心に客船の魅力が認識され、どのクルーズも予約で埋まります。当社の「にっぽん丸」は客船としては小型で高級旅館に似たスタイルです。海外の主流は巨大リゾート型で、大規模な欧米クルーズ会社も絶好調です。

    ── 風力を補助動力に使う船を開発中ですが、実現するのですか。

    池田 実現すると思います。帆を船の先に一本立てるのですが、技術進歩により、風況のよい航路を選べるようになりました。燃料費を2割以上、削減できると試算しています。

    (構成=浜田健太郎・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 現行の人事制度改革のその前の制度改革を担当しました。同期入社で給与に差を付けたのですが、相当議論をしました。

    Q 「私を変えた本」は

    A 何度も読み返す愛読書は「三国志」です。中国語の直訳版や吉川英治版、いろいろな翻訳を読み、違いを楽しんでいます。

    Q 休日の過ごし方

    A ゴルフがないときは、午前中にジムに行き帰ってからは「のど自慢」「新婚さんいらっしゃい」などを見て、眠気がきたら昼寝をします。至福の時間です。


     ■人物略歴

    いけだ・じゅんいちろう

     1956年生まれ。東京教育大学(現筑波大学)付属駒場高校卒業、東京大学法学部卒業、79年商船三井入社、2008年執行役員、13年取締役専務執行役員を経て15年6月から現職。長野県出身。62歳。


    事業内容:総合海運業

    本社所在地:東京都港区

    設立:1884年5月

    資本金:654億円

    従業員数:1万828人(2018年3月、連結)

    業績(18年3月期、連結)

    売上高:1兆6523億9300万円

    経常利益:314億7300万円

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