「最低限の作業で元に戻すのが修復師」中澤宗幸 日本ヴァイオリン創業者・顧問 ストラディバリウスの世界
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製造から300年以上経た楽器を使い続けるためには、修復師の存在が欠かせない。国内屈指のオールド・バイオリンの修復師である中澤宗幸さんに、修復師の仕事について聞いた。
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(編集部)
これまでに60丁以上のストラディバリウスを手にしてきました。共通するのは、ただ素晴らしい音が鳴るだけでなく、秀でた芸術品でもあることです。なぜ他の製作者はまねをできないのか、それはわかりません。ただ一つ言えることは、ストラディバリはバイオリンの材料となる素材と対話できる人だったということです。私の実家は兵庫県で山林業を営み、私自身も木とともに育ちました。父は植林をする時、「ここは風が強い場所だから、しわい(固い)木が育つ」なんて話をしていました。ストラディバリもそういう知識を持って素材を選んでいたのでしょう。
バイオリンの修復とは、オリジナルを保つお手伝いをする仕事です。いかに最低限の作業で元の状態に戻すかが問われます。比較的簡単に直せるものもありますが、いったん分解する「開腹手術」が必要な場合もあります。
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週刊エコノミスト
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