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週刊エコノミスト Online 挑戦者2018

「勘と経験」脱しAIで人材採用 島田寛基 scouty社長

島田寛基 scouty社長(撮影=武市公孝)
島田寛基 scouty社長(撮影=武市公孝)

 大手の転職雑誌の調べでは、IT技術者の求人倍率は8倍を超えている。ならば転職を考えている層を掘り起こそう──。ネット上にある個人情報を基に人工知能(AI)を使い、マッチングの可能性の高い転職支援を手掛けている。

(聞き手=藤枝克治・本紙編集長)

(構成=米江貴史・編集部)

 我々の調査では、良い職があれば転職したいというエンジニアは約6割います。この「転職潜在層」を、ツイッターやフェイスブックをはじめソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などで公開されている情報を基に、AIが履歴書のようなデータベースを作ります。

 AIはさらに、経歴情報の変更や「仕事に疲れた」といったツイートの内容などを「転職の可能性があるサイン」と学習しています。AIがそのように判断すれば、その人は「転職可能性が高い」というようにシステム上でラベル付けされていきます。データベースには連絡先情報や経歴、技術力などが登録されており、約100万人分に上ります。

 転職へのスカウトはタレントプールがベースです。転職対象者が仕事に言及しなくても、示唆するツイートを発していれば、AIは「辞めたいサイン」と判断します。事前にその人をタレントプールに登録した企業には転職希望者としてアラートが発信されます。受け取った企業の人事担当者がその人にスカウトのメールを送る、という仕組みです。

 IT企業は技術者の採用に苦戦してきました。IT技術者は友人など縁故で転職したりフリーになったりするケースが多く、接触が難しいためで、この形なら好転します。また転職の兆候データに基づくマッチングなので、ミスマッチが減ります。

 採用コストも抑えられます。これまでは成功報酬として転職支援会社に年収の35%程度を払っていたので、年収が600万円のエンジニアを採用した場合は210万円でした。当社では6カ月契約で、初期費用30万円と月額15万円の計120万円です。現在IT系を中心に50社以上が導入しており、約30人が転職しました。

scoutyのデータベース画面。プロフィールのほか技術力などのデータが登録されている。(同社提供)
scoutyのデータベース画面。プロフィールのほか技術力などのデータが登録されている。(同社提供)

「新技術で現状打破」

 小学生のころから技術を研究して起業したいと思い、中学生のときには高校生だった兄と、地元の友達100人を登録してSNSを作りました。

 大学では、新しい技術で現状を打破するようなことがやりたいと思っていました。英国の大学院に進み、就職した優秀な友人が初歩的なパソコンの作業に従事しているのを知り、もっと能力を生かせる環境があると感じました。調べてみると、企業の採用活動は勘と経験が頼りで、システム化されていない。AIに置き換える余地があると感じました。

 2016年1月の夜中、SNSから数千人のデータを活用して12時間で試作品を作り、その後も試行錯誤して改良を続けました。その年の5月に会社を作ると2~3社に使ってもらえ、半年後に最初の転職者が生まれました。

 今の売り上げは月間1000万円ぐらい。来年の9月には月間5000万円を目指します。

 SNSなどのオープンデータからは、人の行動が分かります。それを可視化して構築すると、その人のニーズを捉えた情報を提供できるようになります。人の生活を豊かにするような、インフラのようなものを作りたい。

 技術をはじめ、成長は誰かの貢献によりもたらされます。ベンチャーは世界に破壊的成長を与えていく存在だと考えています。


企業概要

事業内容:転職支援サービス

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2016年5月

資本金:1億1440万円(資本準備金含む)

従業員数:19人(18年9月現在)


 ■人物略歴

しまだ・ひろき

 1992年北海道生まれ。宮城県立仙台第二高校、京都大学工学部卒業。2016年英エディンバラ大学大学院修士課程修了。同年5月、日本初のAIによるヘッドハンティングサービスを展開するscouty(スカウティ)を創業。

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