論壇・論調 独メルケル氏の党首辞任表明 有権者の不満受け止め決断=熊谷徹
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10月29日にドイツのメルケル首相はバイエルン州議会選挙に続いてヘッセン州議会選挙でも与党が大敗したことを受け、今年12月のキリスト教民主同盟(CDU)の党大会で党首選に立候補せず、現在の任期を最後に首相を辞任し、その後は政界から引退する方針を明らかにした。(89ページに関連記事)
ワールドウォッチ
ドイツで最もCDU寄りの日刊紙『フランクフルター・アルゲマイネ(FAZ)』のB・コーラー共同発行人は10月30日付で「メルケル氏は州議会選挙での大敗を反省して正しい決断を下した。この発表により首相はCDUの硬直状態を終息させた」と首相の決定を称賛した。FAZはメルケル氏の「党首選に立候補しないことは、今年の夏休み前に決めていた。11月3日の党役員会で発表するつもりだった」という言葉を引用し、首相がキリスト教社会同盟(CSU)のゼーホーファー内相との対立など、さまざまな政権内のトラブルを経て引退を決意し、州議会選のダブル敗北のために発表を早めたという見方をしている。メルケル氏は元々首相が党首も兼ねなくてはスムーズに政局を運営できないという信念の持ち主。このためFAZは「メルケル氏が2021年まで首相を務められる保証はない」として、CDU党首と首相が別々の人物という状態は長続きしないと見る。
公共放送ARDのA・フュンフィンガー記者は10月29日付のウェブサイトで「メルケル首相は有権者の抗議を真摯(しんし)に受け止め、引退のための一歩を踏み出した。だがドイツ連邦政府がひどい状態に陥っているのはメルケル氏だけの責任ではない。ゼーホーファー氏はなぜCSU党首を辞任しないのか」と述べ、大連立政権に加わっている他の政党の党首も進退を明らかにするべきだと指摘した。
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週刊エコノミスト
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