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次世代まで愛される串カツ屋を目指す 貫啓二 串カツ田中ホールディングス社長 編集長インタビュー/931

    貫 啓二 串カツ田中ホールディングス社長
    貫 啓二 串カツ田中ホールディングス社長

    次世代まで愛される串カツ屋を目指す

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 1号店から10年で200店超に拡大しました。急成長の原動力は。

    貫 当社の串カツがおいしいということはありますが、一般的に、一業態で多店舗展開するのは非常に難しいものです。実は、大阪でも串カツは一部の地域を除いてお好み焼きやたこ焼きほど日常的に食べられているわけではありません。その串カツの店を200店まで増やせたのは、店舗を始めたのがリーマン・ショックの直後だったので1本100~200円の串カツが受け入れられたこと、テレビなどで大阪の「二度づけ禁止」の串カツが紹介される機会が増えたタイミングだったこと、そして揚げ物は多くの人に好まれるなどの要素が複合的に組み合わさって奇跡が起きたと思っています。

    ── 改正健康増進法(受動喫煙対策法、2020年4月全面施行)を先取りする形で18年6月に全店禁煙に踏み切りました。影響は。

    貫 反応は良いです。10月の既存店売上高は前年同月比11・6%増、客数は同16・0%増になりました。ただ、たくさん取材を受けたので、この数字はメディアの効果が大きいでしょう。本当の影響が見えるのはもっと先だと思います。

    ── 飲食店の中でも、居酒屋は禁煙化の売り上げへの影響が大きいと言われています。

    貫 全店禁煙化については2年くらい悩みました。当社は「串カツといえば串カツ田中の味」と子どもたちに覚えてもらって、10年、20年食べ継がれる永続する企業になるために子連れ客を大事にしているので、いずれは禁煙化を決断する必要がありました。やるならば注目されなければ意味がない。だから他社に先駆けて全店禁煙に踏み切りました。

     串カツ田中にはもう行かないという喫煙者の声も、ツイッター等で確認しています。「店内禁煙だけど行きたい」と喫煙者が思えるような店を目指すしかないと思っています。

    研修店舗を開設

    ── メニューにソースは「二度づけ禁止」と書いていますが、本当はお客ごとにソースを入れ替えていますよね。

    貫 当店ではソースをお客様ごとに回収・廃棄するので衛生面の問題はありませんが、「二度づけ禁止」は串カツの文化。そこは大事にしたいと思っています。アスパラガスのように長くて一度にソースをつけられない場合はキャベツでソースをすくってかける、なんてことをメニューに書いているのも、串カツ文化を守るためです。

    ── シンプルな料理の串カツで、どのように差別化したのでしょう。

    貫 串カツは油と衣、ソースのバランスで味が決まりますが、一口に説明するのは難しいです。1号店を出すまでに、副社長の田中(洋江さん)と串カツを食べ歩き、8年間かけて試作を繰り返しましたがまったく思い通りになりませんでした。

    ── 08年に田中家のレシピを見つけたのが突破口になった。

    貫 田中が育った大阪市西成区の地域は串カツ屋やたこ焼き屋がひしめく場所です。田中の父は串カツが大好きな娘のために周囲の人たちからいろいろとコツを聞き、ノートに書き付けたのだと思います。そのレシピの通りに作ってみて、驚きました。自分たちではたどり着けない味だったからです。それがベストなのかはわかりませんでしたが、信念を持って勝負できる味が見つかったと思いました。

    ── 居酒屋という業態には珍しく、住宅地での出店が多いですね。

    貫 08年に串カツ田中の1号店を出した時は資金的に厳しい状況で、出店費用を抑えられる住宅地に出したのが住宅街への出店のきっかけになりました。やってみると、競合が少ない、バイトを集めやすい、子連れのファミリーなど一定のマーケットがある、などのメリットがあることがわかりました。とはいえ、人通りの少ない住宅地は、リピーターを確保できなければ半年程度で撤退に追い込まれる難しい立地です。だからこそ、子どもたちが大人になっても食べ続けてくれるようなお店になる必要があると考えました。

    ── 外食産業の1年目の離職率は3割に上るとの統計もあります。人材をどう定着させますか。

    貫 分析してみると、同期という仲間ができる新卒社員よりも、中途採用の方が離職率が高いことがわかりました。また1年目を過ぎると、離職率が下がります。その入社1年目の対策を始めています。中途採用は通常、いきなり現場の店舗に配属されるわけですが、知らない人だらけの中に放り込まれるのはストレスですし、バイトに仕事を教わる可能性もあります。そこでトレーナーの指導を受けてから店舗の現場に出るというステップを設けるために、18年4月に日本橋小伝馬町に研修センター兼店舗を作りました。

    ── 新卒社員の教育にはどう取り組みますか。

    貫 今年度は20人、来年度は60人ほど新卒を採用します。ものすごく人数が増えるので、来年4月に「ルーキー営業部」を立ち上げます。基本的に新卒社員だけが所属する部署です。入社後、座学の研修を終えた後に、新卒だけで新店舗立ち上げをやっていきます。これを2週くらいやると、社員の半分くらいが新卒ルーキー営業の経験者になり、企業理念が浸透すると期待しています。

    ── 目標とする国内1000店の達成時期は。

    貫 まだ先になると思います。店舗展開だけでなく、串カツの冷凍商品や、ソースの販売などを検討する可能性もあると思います。

    (構成=花谷美枝・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A ちょうど30歳の頃に大借金をしてデザイナーズレストランを開業しました。当時は長期戦略もなければ理念もない、ダメ経営者でした。

    Q 「好きな酒」は

    A ハイボールです。串カツにはハイボールとビールがよく合います。

    Q 休日の過ごし方

    A 最近は宮古島に行きました。


     ■人物略歴

    ぬき・けいじ

     1971年大阪府生まれ。大阪府立島本高校卒業後、トヨタ輸送に入社。退職後、98年に大阪市内にショットバーを開業。2002年、串カツ田中の前身となる会社を設立、代表に就任。08年に串カツ田中1号店開店。持ち株会社制移行に伴い18年6月から現職。47歳。


    事業内容:飲食店の経営

    本社所在地:東京都品川区

    設立:2002年3月

    資本金:3億円(18年6月1日)

    従業員数:178人(その他臨時雇用者223人、17年11月)

    業績(17年11月期)

    売上高:55億2952万円

    営業利益:3億8723万円

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