小説 高橋是清 第21話 一条十次郎のこと=板谷敏彦
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(前号まで)デビッド・マレーの通訳となった是清は、政府首脳や上流階級に着々と人脈を築き始める。お雇い外国人を招いて開かれた西郷従道の晩餐会、伊藤博文家での宴席など華やかな日々が続く。
明治8(1875)年10月10日、是清が2年間にわたって通訳として仕えていたデビッド・マレーが、翌年5月から始まるフィラデルフィア万国博覧会の準備にむけて米国に出張することになった。それに伴い、手が空いた是清には文部省から大阪外国語学校(旧制第三高校〈現在の京都大学〉の前身)校長の辞令が出された。
日本政府は外貨を獲得すべく、輸出振興に力を入れようとしていた。フィラデルフィア万国博覧会は願ってもない好機である。この万博はちょうどアメリカ合衆国建国100周年記念に当たり、35カ国が参加する盛大な催しになった。
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週刊エコノミスト
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