小説 高橋是清 第22話=板谷敏彦
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デビッド・マレーに仕えた後、大阪外国語学校校長の辞令が出され、出世の階段を上る是清。しかし引きこもり生活を続ける留学時代の恩人一条十次郎のために校長職を投げうってしまう。
第22話 サムライの終焉
明治9(1876)年5月、「世捨て人」の一条十次郎のもとを離れた是清が、いわば現実の世界へと戻り東京英語学校に職を得た頃、日本は維新以来のひとつの大きな節目を迎えようとしていた。
同年3月28日、廃刀令が布告されたのである。思えば明治2年に公議所で森有礼(ありのり)が廃刀論を提唱し、各藩代表の議員たちの激しい抵抗によって退職を余儀なくされたことがあった。ところが、その後発せられた徴兵令によって「国民皆兵」となり、旧士族に言わせれば百姓からも兵が集められることになった。また街には巡査が登場し、個々人の刀による倒敵護身の必要もなくなった。
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