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教養・歴史 闘論席

池谷裕二の闘論席 芸術の価値を評価するのは難しい

 芸術の価値を評価するのは難しい。芸術は表現も解釈も一様でなく、創作者によっても鑑賞者によっても感じ方が異なる。芸術のテイストは、究極的には、個人の内側に閉じた「好みの問題」である。

 一方、芸術が他者の目を意識した社会的な行為であることもまた事実だ。作家以外に誰も理解できる人のいない作品を、人々は「芸術」とは呼ばない。それは決して高尚にして難解な作品でなく、単に独りよがりに過ぎず、芸術的価値は無いに等しい。芸術は(少なくとも特定の集団の)人々から共感が得られて、はじめて「芸術」として認められる。

 では、芸術の社会的価値をどのように定量したらよいだろうか。米ノースイースタン大学のバラバシ博士らは11月の米科学誌『サイエンス』で、芸術家の評価を数学的に計測できる方法を発表した。博士らは、約50万人の作家について、作品がどのような展示会や画廊、オークションに出品されたかを、36年間にわたり追跡集計した。その上で個々の作品の「巡回」の様子を大規模ネットワークに映し出すと、巡回コアとも呼べる「中心…

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