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ゴーン氏の逮捕容疑 支払い未発生の役員報酬 問われる不記載の違法性=編集部

    内部通報から強制捜査につながったのだが(Bloomberg)
    内部通報から強制捜査につながったのだが(Bloomberg)

     東京地検特捜部に逮捕された日産自動車前会長のカルロス・ゴーン氏と同社前代表取締役のグレッグ・ケリー氏の容疑事実について、「未記載だった報酬について、法令違反が問われる事由だったのか」と疑問の声が上がっている。

     ゴーン氏の逮捕容疑は、ケリー氏と共謀して、2010~14年度の報酬額が計99億9800万円だったのに、有価証券報告書(有報)には計49億8700万円と虚偽の記載をして関東財務局に提出したことだ。逮捕の発表時には、未記載だった報酬とはどのようなものか、詳細は不明だった。

     内容が明らかになってきたのは、数日後の新聞報道からだ。これまでに、逮捕容疑である10~14年度の約50億円の未記載分に加えて、15~17年度の計30億円についても同様に未記載だったことが報じられている。未記載とされる合計80億円は、退職慰労金▽競業他社に就かないための契約金▽コンサルタント料、などの名目で、ゴーン氏の退職後に支払う枠組みを検討していたとみられる。

    支払い蓋然性は?

     別の言い方をすれば、いまだに支払いが発生していない報酬を記載していないことについて、虚偽記載だと問われていることになる。この点については、複数の有識者が疑義を呈している。

     会計評論家の細野祐二氏は、「会計学の観点で見れば、ゴーン氏の場合、退任後に役員報酬を受け取ることが確定しているとは言い難い。日産は将来の支払い分を負債として認識する必要はなく、有報への記載義務はない」と指摘する。

     退職金や役員退任慰労金などは「退職給付会計」に属する。ただし、何を負債として認識して計上するべきかは、個別判断が求められる。その判断基準は三つあるが、ゴーン氏の「退職後の役員報酬」については、支払い義務が発生する可能性が高いかが問われている。

     企業一般について言えることだが、役員については業績によって退職後の報酬金は支払いなしとなる可能性もある。退任時に赤字になっている企業から、退職慰労金を受け取れる可能性はきわめて低い。細野氏は、現実に支払っていない、かつ、支払いの蓋然(がいぜん)性が高いとまでは言えない報酬を負債として計上する必要はない、との認識だ。

     実際、ゴーン氏・ケリー氏とも容疑を否認しており、ケリー氏は「退任後の受け取りが確定していたわけではない。確定していない報酬は報告書への記載義務がない」と違法性を否定しているという(11月27日付『毎日新聞』朝刊)

     元検事で企業統治にも詳しい郷原信郎弁護士も「『支払うことの約束』にとどめている報酬について、虚偽記載として犯罪に問うのは厳しい。強制捜査するべき事由なのか」と疑義を投げかける。その上で、「『支払うことの約束』にとどめた報酬を有報に記載するべきか否かは、日産が法律事務所や会計事務所に問い合わせて解決するべき問題だった。仮に『金融商品取引法上問題あり』という結論になれば、ゴーン氏本人に記載了承を求める、あるいは取締役会で記載について議論するという手法があった。本来はガバナンスで処理するべき問題だった」と指摘する。

     ゴーン氏の刑事処分がどうであれ、日産と三菱自動車の会長を解任されたことに変わりはない。ゴーン氏はルノー、日産、三菱自提携の扇の要だった。3社は今後提携のあり方を議論していくが、ゴーン氏不在の中、着地点を見いだすのは容易ではない。

    (編集部)

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