週刊エコノミスト Online挑戦者2018

山本遼 R65不動産社長 「高齢者の入居お断り」を撲滅したい

    山本遼 R65不動産社長(撮影=武市公孝)
    山本遼 R65不動産社長(撮影=武市公孝)

     若者とファミリー層がメインの賃貸仲介業の市場で、対象を65歳以上に限定する異色の不動産会社。不動産業界に根強く残る「高齢者の入居お断り」をなくすことを目指している。

    (聞き手=花谷美枝・編集部)

    「どの不動産会社も門前払いなの。ここが5軒目よ」。入社3年目、愛媛から東京に異動して間もなかった僕が勤めていた不動産会社に来店した80代の女性は、とても困った様子でした。彼女の希望に応えようと物件情報を求めて大家や不動産会社に問い合わせしましたが、いずれも「高齢者はお断り」。シニアの部屋探しの難しさに直面しました。

     部屋を貸す大家が少なく、また借り手の意思決定に時間がかかる高齢者の部屋探しは、数をこなしてフィーを稼ぐ不動産仲介業には向きません。勤務先は事業化に消極的だったので、ならば自分でやろうと独立を決意しました。

    大家も関心持つ

     相続税を支払うために自宅を売却した、マンションの建て替えで退去を迫られた、など事情はさまざまですが、高齢者が賃貸住宅を探すことは珍しくありません。子が住まいの近くに親を呼び寄せるケースも多いです。

     しかし、大家の多くは入居を断り、不動産会社も高齢者のお客を門前払いします。

     大家が恐れるのは孤独死のリスクです。死後発見が遅れると建物に影響しますし、いわゆる「事故物件」として賃料の値下げを余儀なくされることもあります。病気による身体の変化など、入居後どうなるか予想がつかないことが、高齢者を遠ざける要因になっています。

     しかし現在は、孤独死に対応するための見守り、またそれに備える保険、滞納に対応するための保証会社などを組み合わせることで高齢者に部屋を貸すリスクを軽減できるようになりつつあります。

     空室の増加により、大家側の事情も変化しています。事業を始めてみると、「空き部屋が埋まるなら」という大家から多く連絡が寄せられて驚きました。実際、高齢者を受け入れると賃貸経営が安定する面があります。賃貸住宅の平均入居期間は、一般の単身者は2年9カ月、ファミリーは6年ですが、高齢者は13年とかなり長いためです。

    お客の高齢者の4割はスマホを使う。サイトからの問い合わせも多い
    お客の高齢者の4割はスマホを使う。サイトからの問い合わせも多い

    見守りサービス開始

     当社が現在、対象とする地域は1都3県。集客のほとんどは紹介で、医療関係者や行政から連絡をもらうこともあります。お客さんは70代がもっとも多く、最高齢は93歳です。

     月40~50件の問い合わせがあり、成約するのは10件程度。自分たちで部屋の案内もするので、人件費支払い後の収支はトントンです。

     経営を安定させるために、新しい取り組みも始めています。その一つが、2018年9月に新電力のアイキューフォーメーション(東京都目黒区)と始めた高齢者の見守りサービスです。起床時と就寝時に電気の使用量が変化しない場合、指定された登録先にメールを送信します。利用料は月600円。すでに不動産会社7社と提携しました。

     目標は、「高齢者向けの賃貸仲介」という事業の消滅です。高齢者が問題なく部屋を見つけられる社会になれば、僕らの事業は不要になります。そのために、不動産会社と勉強会を開き、ノウハウを共有していく取り組みも始めています。僕自身が食べていく方法も考えつつ、社会課題の解決に取り組んでいきます。


    企業概要

    事業内容:不動産仲介

    本社所在地:東京都杉並区

    設立:2016年4月

    資本金:100万円

    従業員数:8人(アルバイト含む)


     ■人物略歴

    やまもと・りょう

     1990年広島県出身。同県立府中高校卒業。愛媛大学工学部を卒業後、不動産会社に就職。東京支店勤務を経て退職。2015年5月にR65不動産を創業。28歳。

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