教養・歴史アートな時間

舞台 二月大歌舞伎 初世尾上辰之助三十三回忌追善狂言=小玉祥子

    尾上松緑の「いがみの権太」
    尾上松緑の「いがみの権太」
    「縮屋新助」
    「縮屋新助」

    「義経千本桜」「名月八幡祭」で尾上松緑が父のあたり役に挑む

     歌舞伎座の「二月大歌舞伎」では初世尾上辰之助の三十三回忌追善(ついぜん)狂言が、昼、夜で上演される。

     初世辰之助は二世尾上松緑の長男。芸と舞踊の両方に優れた技量を持つ立役(たちやく)(男役)として人気を集めたが、病気のため、1987年に40歳の若さで世を去った。初世辰之助の長男である現松緑が、父のあたり役に挑む。

     昼が古典の人気演目「すし屋」のいがみの権太。「義経千本桜」の一段。源平の合戦で平家が敗れて後、平維盛は、釣瓶(つるべ)すし屋の主人、弥左衛門にかくまわれ、弥助と名を改めている。その弥助に弥左衛門の娘お里は正体を知らずにほれ込んでいる。弥左衛門の息子でならず者の権太は、弥助が維盛と知って源氏方に訴人し、維盛の首実検に訪れた源氏方の梶原景時に、維盛の首と維盛の妻子である若葉の内侍(ないし)と六代君(ろくだいぎみ)を引き渡す。だが、2人に成りすましていたのは実は権太の妻子。首も偽物であった。事情を知らずに怒った弥左衛門に刺された権太は、本心を打ち明けて息絶える。

     悪人と見えた権太が実は善人であった……というのがミソで、瀕死(ひんし)の権太が心情を吐露する「モドリ」は見どころだ。権太は母親に甘え、お里に兄貴風を吹かせるなど、愛嬌(あいきょう)も必要とされる。

     弥助は平家の公達(きんだち)らしい柔らかさの必要な二枚目で、尾上菊之助が演じる。愛らしい田舎娘のお里は中村梅枝。景時は中村芝翫(しかん)、弥左衛門が市川団蔵と周囲もそろう。

     夜の追善狂言「名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)」は池田大伍の新作歌舞伎。松緑は主人公の新助を演じる。越後から出てきた縮屋(ちぢみや)の新助は深川の芸者、美代吉から、金を用立ててくれたら女房になる、と言われ国許(くにもと)の家屋敷を売って金を都合する。だが別件で金のできた美代吉は、別れた恋人の船頭三次とよりを戻し、新助との約束を反故(ほご)にする。新助は心を乱して言動もおかしくなり、八幡祭の宵宮(例祭の前夜)に美代吉を手にかける。

     河竹黙阿弥の「八幡祭小望月賑(はちまんまつりよみやのにぎわい)」の改作で1918年が初演。美代吉はフランスのアベ・プレヴォー作の小説『マノン・レスコー』の主人公マノンを取り入れて造形したとされる。気まぐれで美しく魅力的で、実直な新助はきりきりまいさせられる。美代吉はあたり役とする坂東玉三郎。三次は新助と対照的な都会の人間で生活力はないが粋で女性にもてる。片岡仁左衛門がつとめる。83年6月の歌舞伎座で初世辰之助の新助、玉三郎の美代吉、仁左衛門(当時孝夫)の三次で上演されたことがあり、新助だけが父から当代松緑に代替わりすることになる。

    (小玉祥子・毎日新聞学芸部)

    尾上松緑の「いがみの権太」(写真右)と「縮屋新助」(左)。歌舞伎座提供

    会期 2月2日(土)~26日(火)

    会場 歌舞伎座(東京都中央区銀座4-12-15)

    料金 1等席1万8000円 2等席1万4000円 3階A席6000円 3階B席4000円 1階桟敷席2万円

    問い合わせ チケットホン松竹(午前10時~午後6時)

    TEL0570-000-489(ナビダイヤル)

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