経済・企業2019年の経営者

グループ再統合で街のIT化を推進 宇野康秀=USEN-NEXT HOLDINGS社長 編集長インタビュー/942

    Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長):Photo 蘆田剛:東京都品川区の本社で
    Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長):Photo 蘆田剛:東京都品川区の本社で

    ── 動画配信会社のU-NEXTが有線放送会社のUSENと統合してから1年が過ぎました。U-NEXTがもともとの母体であったUSENを買収した形です。ここまでU-NEXTが成長できたポイントは。

    宇野 サービスそのものは、絶対に普及すると確信していました。ネットを利用して映画やドラマを視聴する市場は必ず拡大するので、その中できちんと事業をしていれば勝ち残れると信じてやり続けたことが大きいと思います。

    ── 動画配信は競合が多いですが、強みは何ですか。

    宇野 一般的な定額料金の見放題のサービスは、映画の場合、劇場公開直後の最新作が対象になりません。しかし多くの人は最新作を見たいし、レンタルビデオでも一番需要があります。当社の料金は他社の約2倍の月額1990円ですが、一定のポイントを付与し、ポイントを使用して最新作も視聴できる仕組みを作りました。新作と旧作見放題を両立したことが大きな差別化になったと思います。

    ── USENの音楽配信は、どういう状況ですか。

    宇野 有線放送を中心とした店舗サービスの事業は、グループの売り上げの3割を占めています。店舗でのBGMなどで利用してもらう音楽配信の市場はほぼ独占状態なので、今後はこの顧客基盤を生かして、タブレットレジなど有線放送以外のサービスを広げていくかというところに注力しています。

    ── U-NEXTとUSENが再び一つのグループになった効果は。

    宇野 今回の統合には、事業統合と、ホールディングス体制への移行の二つの狙いがありました。U-NEXTは、ネットを利用したウェブマーケティングや代理店の活用など、自社の営業力に頼らないマーケティング手法で大きく成長しました。一方、USENは営業マンが飛び込みで直接交渉する旧来の営業手法でした。事業統合によって、USENが、U-NEXTで培ってきた営業手法を生かせるのではないかと思いました。音楽配信だけでなく複数の商材の販売が好調で、統合のシナジー(相乗効果)が出ています。

    ── 他に注力している分野は。

    宇野 自動精算機を手がけるアルメックスという会社があり、グループの中核の一つになっています。もともとレジャーホテルなどで対面での精算をしないで済むように開発された機器ですが、現金とキャッシュレスの両方に対応した複合機の需要は非常に大きいので、この分野は今後も伸びていくと思います。

     また、病院向けに診察券の自動再来受付機を提供しています。さらに進めて、顔認証で登録して、病院では支払いが不要で、後ほどクレジットカードで精算し、診察が終わったらそのまま帰れるというシステムを開発しています。こうした省人化、省力化の領域はかなり広がっていくのではないかと期待しています。

     宇野氏は20代で人材派遣会社インテリジェンス(現パーソルキャリア)を設立。1998年に父が創業した大阪有線放送社(後のUSEN)社長に就任し、一大グループを形成した。しかし業績悪化でグループは解体。USENの経営から離れ、個人でU-NEXTを継承し、5年後に上場。17年末の経営統合に至る。

    ── USENは1990年代の終わりに有線放送からITの領域に事業を急拡大しました。しかし、業績が悪化して、宇野さんはUSENの社長を退任することになりました。振り返ってどうですか。

    宇野 いろんな仕掛けが少し早すぎました。早すぎたと分かったなら事業展開をもっと制御すればよかったのかもしれないですが、ブロードバンドを普及させなければいけないという使命感もあって、アクセルを踏みすぎてしまった。冷静な判断ができていなかったと思います。

    ── 社長は辞めましたが、USENが展開していた動画配信事業を個人で買収して、U-NEXTとして続けました。

    宇野 ブロードバンドの普及に力を入れたのは、光ファイバーによって大量のデータが送れるようになれば動画配信など新しいサービスが誕生すると思っていたからです。ようやくその環境が整いつつあったのに、なぜここであきらめなければいけないのかという思いがありました。

    ── USENの社長時代と今では宇野さんは変わりましたか。

    宇野 統合のもう一つの狙いであるホールディングスの体制にしたことが、大きな変化だと思っています。

     私は25歳でインテリジェンスを創業し社長になり、今年でちょうど30年です。これまでずっと事業会社の社長として、自分で事業を考えて会社を引っ張っていく立場でやってきたのが、今はホールディングスの社長に専念して、事業会社の社長は一社もやっていません。

    ── 人に任せるのは性に合わなかった。

    宇野 今まではそうだったのですが、人に任せて機能を分担するようにしました。自分で事業をやっている時は、プレーヤーとして主体的にしか見ることができなかった部分を、今は客観的に見ることができます。ただ熱量でぶつかっていくだけでなく、俯瞰(ふかん)して冷静な判断ができる立場になっていると思います。

    (構成=村田晋一郎・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 35歳で大阪有線放送を創業者の父から継ぐことになりましたが、会社に課題が多すぎて躊躇(ちゅうちょ)している間もなく、ひたすら再建に取り組む怒涛(どとう)の日々でした。引き受けてから3年で上場できたのは奇跡的なスピードだったと思います。

    Q 「好きな本」は

    A アルビン・トフラーの『第三の波』で、高校生の時に読んで、事業家になることを決心しました。

    Q 休日の過ごし方

    A スポーツや山登りをして、体を動かしています。トライアスロンは年に3回程度は大会に出ています。


     ■人物略歴

    うの・やすひで

     1963年生まれ。清風高校卒業、明治学院大学法学部卒業。88年リクルートコスモス入社、89年インテリジェンス設立。98年大阪有線放送社(後のUSEN)社長に就任。2010年退任、USENの映像配信事業を継承し、U-NEXT社長に就任。17年12月、U-NEXTとUSENの経営統合により現職。大阪府出身、55歳。


    事業内容:店舗サービス、通信、業務用システム、コンテンツ配信等

    本社所在地:東京都品川区

    設立:2009年2月

    資本金:9445万円(17年12月現在)

    従業員数:4073人(18年8月現在、連結)

    業績(18年8月期、連結)

    売上高:1079億3200万円

    営業利益:60億600万円

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