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“バイオ薬の雄”ペプチドリーム 窪田規一会長 インタビュー

窪田規一 ペプチドリーム会長
窪田規一 ペプチドリーム会長

 時価総額が6000億円超とバイオ関連株で最大のベンチャー・ペプチドリーム。共同で研究開発する製薬会社は国内外の大手19社に上る。なにが強みなのか。創業者の窪田規一会長に聞いた。

(稲留正英/下桐実雅子・編集部)

薬の「たね」を製薬大手に提供 ローリスクで報酬得る仕組み

 薬の開発は、まずターゲット(どこに働くか)を見つけて、それに対して働く候補物質を作り上げる。人への臨床試験まで、全工程で10~15年が当たり前の世界だ。

 私たちがやっているのは、薬になる確率の高い候補物質を作り上げるところ。2000年以降、抗体医薬(抗体というたんぱく質を使う薬)が中心になってはいるが、抗体医薬のターゲットは限られており、新しい候補物質が見つかる可能性は低いのが現状だ。次の新しい候補として、私たちは特殊ペプチドを作り上げた。

 ペプチドはアミノ酸がつながったもので、ペプチドが複数重なったものがたんぱく質だ。ペプチドは人の体を構成しており、インスリン(血糖値を下げる働きをするホルモン。糖尿病の治療に使われる)も実はペプチドだ。自然界のカビが作り出す特殊なペプチドが免疫抑制剤になった例もある。特に海外の製薬企業は、特殊ペプチドの可能性を十分理解していた。

 特殊ペプチドは化学合成できるが、これまでは時間とお金がかかり過ぎて研究開発に使えなかった。それを大量に安価に正確に作る技術を、私たちは世界で初めて開発した。そこの技術を独占しているので、多くの製薬企業と共同開発している。契約金や研究開発のステージが進むごとに成果報酬が入り、薬として販売されたらロイヤルティーも得られる仕組みだ。

 小さな試験管に1兆種類の特殊ペプチドを作れるので、ターゲットさえしっかりあれば、薬の候補物質は90%以上の確率で取れる。製薬メーカーはそれを製品化する工程に取り組めばよいのでリスクが少ない。開発中のプログラムは94本。ノバルティスやメルクなど世界7社に技術ライセンスもしている。

22年に最初の薬

 臨床試験に入っているのはブリストル・マイヤーズスクイブが開発中のがんの薬と、その薬が患者に効くかどうかを調べる診断薬。今後、相当な数の候補物質が臨床試験に進むと予想している。22年6月までに一つ以上、薬を発売するのが目標。抗体医薬の多くは今後、特殊ペプチドに置き換わるだろう。値段も安い。抗体医薬は飲み薬にはなりにくいが、特殊ペプチドは飲み薬にすることも可能だ。開発対象は、がん、マラリアなどの感染症、アルツハイマー、生活習慣病、脊髄(せきずい)損傷など幅広い。

 17年、特殊ペプチドの原薬を製造販売する会社「ペプチスター」を設立し、今年9月ごろ稼働予定だ。大量に効率良く作くれるノウハウがあるので、化学メーカーなどにも入ってもらい、日本全体で特殊ペプチドを製造する体制を目指している。医薬品は2兆円以上の輸入超過であり、それを解消できるような産業基盤を作りたい。

 サンバイオを含めて、日本の創薬ベンチャーのビジネスモデルはだいたい同じだ。自分のところで創薬のターゲットを見つけるか、ターゲットに対する薬の候補物質を見つける。それを臨床試験などでエビデンス(科学的根拠)を作り上がるところまで自分たちで行い、製薬会社に持っていく。

 (成功するのは)千に三つぐらいの確率。薬の開発を一からやること自体が、ベンチャーには無理がある。ヒトを対象にする臨床試験はやってみないとわからず、非常にリスクが高い。また前臨床や臨床に踏み込むほどリスクとお金がかかる。開発の工程でずっとお金を集めないといけない。当社はまったく違って、ローリスク、ミドルリターンで構わないという独自のビジネスモデルを作り出した。サンバイオの件(臨床試験失敗による株価急落)があったが、当社の株価はその翌日以降も上がっている。

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