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「3.11」原発事故から8年 日本は再エネの先頭に立て=アドナン・Z・アミン 国際再生可能エネルギー機関事務局長

    アドナン・Z・アミン 国際再生可能エネルギー機関事務局長
    アドナン・Z・アミン 国際再生可能エネルギー機関事務局長

     3月11日で東日本大震災から8年。福島原発事故は世界のエネルギー政策に大きな影響を与えた。2011年4月に再生可能エネルギーの普及や利用促進を目的として正式に設立されたのが、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)だ。日本を含めた158カ国と欧州連合(EU)が加盟し、本部をアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビに置く。講演のため3月に来日したアドナン・Z・アミン事務局長に、再エネ普及の現状などを聞いた。

    (聞き手=下桐実雅子・編集部)

    ── 原発事故が世界のエネルギー政策に与えたインパクトは。

    ■この8年間で、グローバルなエネルギーシステムの変化のスピードは目覚ましかった。著名なエネルギーの専門家らが言っていたのは、福島の事故ですべてが変わると。ただ、日本の国外はずいぶん変わったが、日本国内はあまり変わっていない印象だ。

     世界の国が原子力発電について再検討を始めた。そして、再エネがビジネスとして成り立つケースがあると分かった。多くの国が再エネに飛びつき、従来型の電源に対して十分に競争力を持てる状態にたどり着いた。これに対し、日本は技術力はあるのに、慎重で保守的な態度を取った。

    ── その理由は。

    ■日本はエネルギー資源に乏しいが、世界で主要な経済国家だ。日本の政策立案者は(再エネへの移行という)破壊的かもしれない変化を慎重に見ている。保守的なことは時には良いが、新しい技術や機会を迅速に活用することが妨げられることもある。

    ── IRENAは1月、「新しい世界 エネルギー変容の地政学」というリポートをまとめた。

    ■過去10年で、電源として最も成長著しかったのが再エネだ。こうした急速な変化によって、化石燃料の貿易に依存した国家関係の秩序が変わりつつある。政策立案者は目を覚まさなくてはならない。(再エネを)活用できるかが、次のステージでどの国がメインプレーヤーになるかを決めるだろう。

    ── 日本政府が18年7月に閣議決定した第5次エネルギー基本計画では、電源に占める再エネ比率の目標値(30年度)を22~24%としている。

    ■とても低い。今の技術やビジネスの事例を見た時、もっと高い数字が可能だと考える。日本は国内総生産(GDP)の5%を輸入エネルギーに依存しており、脆弱(ぜいじゃく)さを持つ。日本は再エネ特許の14%を保有し、(再エネで世界の)先頭に立つ国の一つになる可能性が十分にある。

    ── 日本に何が必要か。

    ■政策や規制の枠組みだ。投資家が安心して(再エネ事業に)投資できるように、政府が明確なシグナルを出すことが必要だ。(投資家への)インセンティブがあれば、再エネ市場で競争力を発揮できるだろう。

    ── 再エネは電源としての安定性に欠け、コストが高いという指摘がある。

    ■それは、政策の問題だ。例えば、ドイツの送電事業は信頼性を持って運営されている。また、過去7、8年で再エネのコストは下がっており、太陽光発電は平均発電コストで73%削減された。再エネ(のコスト)が高いというのは通用しない考え方で、多くの国で競争力のある選択肢になっている。技術のコストは政策、規制、市場の枠組みによる。日本政府は将来について真剣に考えるべきで、今が分水嶺(ぶんすいれい)だ。

    ── 世界の状況は?

    ■再エネ利用が進むドイツでは大型投資の結果、コストはかなり下がった。米国は政治的にはいろいろあるが、州レベルでの取り組みが進んでおり、カリフォルニア州は昨年、(2045年までに州内で使用するエネルギーを100%再エネとする)「再エネ100%」の目標を宣言し、軌道に乗っている。

     中国も急速に動いており、長距離の超高圧送電技術で大きな能力をもっている。南米チリでも電力を100%再エネでまかなう方向に動きつつある。政策立案者の先見の明や勇気が問われるだろう。

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